長引く咳に悩まされて病院に行ったものの、レントゲンには異常なし。
そんなとき、原因が「副鼻腔炎」である可能性があります。
副鼻腔炎は風邪やアレルギーと見分けがつきにくく、診断が遅れることも少なくありません。
放置すると慢性化し、喘息の悪化を引き起こすこともあります。

POINT
  • 発熱が数日以上続くなら副鼻腔炎の可能性も疑おう
  • 目の奥の痛みや重だるさも重要な手がかり
  • 喘息の悪化にも関係あり

副鼻腔炎は「上気道」と「下気道」にまたがる病態と関連しており、咳が続くときは耳鼻科での診察が重要です。

副鼻腔炎の主な症状

副鼻腔炎の主な症状

副鼻腔炎では、黄色や緑色の鼻水、鼻づまり、頭痛、顔面痛、倦怠感、咳がよく見られます。特に後鼻漏による咳は朝方に強く、2週間以上続くこともあります。また、目の奥の痛みや圧迫感、発熱(特に38度以上)がある場合には要注意です。
喘息を持つ方では、咳が慢性化しやすく、息苦しさや喘鳴が重なることもあります。

副鼻腔炎の原因・副鼻腔炎になり易い方

副鼻腔炎はウイルスや細菌感染、またアレルギーや構造的な問題(鼻中隔湾曲など)によって副鼻腔に炎症が生じることで発症します。慢性化すると副鼻腔気管支症候群(SBS)という上気道と下気道の炎症が共存する状態になることがあります。
特に、アレルギー性鼻炎や好酸球性鼻副鼻腔炎を持つ方、喘息を持っている方は発症・悪化しやすいとされます。

副鼻腔炎の検査/診断方法

副鼻腔炎の検査/診断方法

副鼻腔炎の診断には、まず問診と視診、内視鏡(ファイバースコープ)による観察が行われます。これにより、後鼻漏、膿性分泌、粘膜の腫れなどを直接確認します。
また、副鼻腔CTを用いることで篩骨洞などの影を明確に確認でき、重症度や慢性化の有無を判断可能です。
その他に、喘息の併発が疑われる場合には呼吸機能検査や喀痰の性状検査を行うこともあります。必要に応じて血液検査(好酸球数やアレルギー関連の指標など)を加えて病態を評価します。

副鼻腔炎の治療方法・回復期間の目安

副鼻腔炎の治療方法・回復期間の目安

急性副鼻腔炎は抗菌薬と去痰薬の服用で1〜2週間程度で改善することが多いです。
慢性副鼻腔炎の場合、マクロライド少量長期療法(3か月程度)を行い、上気道と下気道双方の炎症をコントロールします。
喘息を併発している場合、ステロイド吸入薬やロイコトリエン受容体拮抗薬などの併用が効果的です。症状や所見の改善度、原因に応じて内視鏡下副鼻腔手術が検討されます。
※重症例や再発例では、生物学的製剤(デュピルマブ等)の使用が考慮される

副鼻腔炎の類似症状の疾患

風邪、アレルギー性鼻炎、咳喘息、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎などが類似症状を示します。
特に咳が続く場合は喘息など気道全体の病態(鼻から肺まで)を考慮する必要があります。

副鼻腔炎にならないための予防・日頃のケア

副鼻腔炎にならないための予防・日頃のケア

日常的には鼻うがいによる洗浄、室内の加湿、禁煙、アレルゲンの回避が有効です。
また、アレルギーが関与するケースでは早めの抗アレルギー薬の服用や、喘息症状がある場合は気道管理を徹底することが大切です。

花粉症のある方は花粉シーズンにマスクや眼鏡を活用しましょう。

さいごに

咳が長引いていても肺の異常が見つからない場合、それは「副鼻腔炎」が原因かもしれません。副鼻腔炎にも様々な種類があり、単なる風邪と思って放置すると慢性化することがあります。

副鼻腔炎に限らず、咳や発熱、目の痛みなどの症状が続く場合は、耳鼻科の診察がおすすめです。

野田 昌生

この記事の監修

野田 昌生(のだ まさお)

  • 自治医科大学 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科 講師
  • 耳鼻科専門医 医学博士