アデノイド増殖症は、鼻の奥にあるアデノイドという組織が腫れ上がることで起こります。これによって、鼻やのどに通じる空間が狭くなり、呼吸や睡眠に支障をきたすことがあります。
小児に多く、2歳頃から小学校低学年くらいまでの子どもに多い疾患です。通常、成長に伴って症状が改善することが多いですが、症状が長期化してしまう場合もあります。

原因について

アデノイド増殖症の原因は明確にはわかっていませんが、一般的には、呼吸器や口腔内の感染症やアレルギーが原因と考えられています。このような炎症が続くことによって、免疫の組織であるアデノイドが腫れることがあるとされています。

病態について

アデノイド増殖症による主な症状として、気道がせまくなることで起こるものが多く、具体的には、鼻詰まりや口呼吸、いびき、睡眠時無呼吸があります。
また、耳と鼻の奥をつなぐ耳管を塞いでしまうことによって、中耳炎やそれによる聴力の低下を引き起こす原因にもなります。

必要な検査とその所見について

アデノイド増殖症の診断には、主に以下の検査が行われます。

  • 喉頭鏡
  • 鼻咽頭ファイバー
  • レントゲン、CTなどの画像検査

また、中耳炎の有無については聴力に関連した検査を、睡眠時無呼吸に関連した検査として、簡易ポリソムノグラフィや終夜sPO2モニタリングを行うこともあります。

【鑑別疾患について】

アデノイド増殖症の症状は、鼻や喉の病気やアレルギー、気道の異常などによっても引き起こされることがあります。そのため、診断の際には、これらの疾患との鑑別が必要となります。
例えば、上気道感染症、気管支喘息、中耳炎、扁桃炎、アレルギー性鼻炎、上咽頭腫瘍などが挙げられます。

治療方法について

アデノイド増殖症の治療方法としては、症状が軽度である場合は保存的に経過をみることが多いです。
サイズが大きく、睡眠時無呼吸やひどい鼻閉、滲出性中耳炎の原因となる場合には、アデノイドを切除するアデノイド切除術の適応となります。

治療を考える際の注意点

アデノイド増殖症による症状によって、生活に影響が出る場合があります。例えば、以下のような点に注意する必要があります。

  • 呼吸のしにくさや口呼吸が続く場合は、睡眠時の酸素不足につながるため、睡眠時無呼吸症候群などの合併症を引き起こす可能性があります。 それによって、日中の集中力低下や眠気、体の成長を妨げる原因にもなります。
  • 口呼吸によって、口の中が乾燥し、口臭や歯周病、虫歯のリスクが高まる場合があります。
  • アデノイド炎症によって、中耳炎がある場合は聴力の低下により、言葉の獲得や会話の制限につながる場合があります。

以上のような点から、高度のアデノイド増殖症の治療は早期に行うことが望ましいです。また、治療後も、適切なケアを行い、定期的に医師の診察を受けることが必要です。

POINT
  • アデノイド増殖症(肥大)は鼻のつきあたりにあるアデノイドが大きい状態
  • 気道を狭くすることで、いびきや睡眠時無呼吸、中耳炎の原因となる
  • 症状の程度がひどい場合には手術加療の適応となる
野田 昌生

この記事の監修

野田 昌生

  • 自治医科大学 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科 講師
  • 耳鼻科専門医 医学博士