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  • 疾患編:「声帯結節」

    【概要】 声帯結節は、声を作る”声帯”に小さなこぶのようなかたまりができるもので、震動が不完全になることによって声がかれたり、出にくくなるなど、声の異常を生じる疾患です。 主に声を頻繁に使用する職業の人や声を多用する趣味を持つ人に多く見られます。小児にも発生することがあり、声を酷使したり、強く出しすぎたりすることが原因となります。 たとえば、学校で運動をしたり、遊んだりするときに大きな声を、力一杯出すことで声帯の表面に小さな隆起(結節)ができることで起こります。 声帯結節は、通常は良性の疾患であり、がん化することはありませんが、声の質に影響を与えるため、治療が必要となる場合があります。 【必要な検査とその所見について】 声帯結節の診断には、主に喉頭ファイバー検査が使用されます。 喉頭ファイバー検査では、喉頭の内部を観察し、声帯結節の有無やその大きさを確認することができます。 また、声帯の振動を確認するために、声帯振動検査や音響分析なども行われます。 【鑑別疾患について】 声帯結節と類似した症状を示す疾患として、声帯ポリープやポリープ様声帯、癌などがあります。これらとの鑑別が必要です。 【治療方法について】 声帯結節の治療方法には、保存加療と手術療法があります。 保存加療では、声を休めたり、発声法の指導を行ったりして、結節が小さくなるかどうか、経過をみていきます。 手術療法では、保存加療が効果的でない場合に選択されます。顕微鏡下に手術を行うマイクロラリンゴサージェリーが一般的で、喉頭鏡を用いて手術を行うため、手術後の経過が比較的良好です。 【治療を考える際の注意点】 声帯結節の治療にあたっては、個々の症状や病状、病歴などを踏まえて、医師と慎重に相談しましょう。手術療法は、手術後の合併症のリスクがあるため、手術が必要な場合でも、その必要性を再度確認しましょう。 【生活への影響と注意点】 声帯結節の治療期間中は、声を休めたり、発声法の指導を行ったりする必要があります。また、治療期間中には、乾燥や無理な発声は避けて、のどに負担をかけないように注意が必要です。 声帯結節を治癒することで、声の質が改善され、普通の生活に戻れることを目標とします。 Point ・声帯結節は、声を作る”声帯”に小さなこぶのようなかたまりができるもの ・大きな声を力一杯出すなど、声の酷使や乱用が原因となり、声の異常をひきおこす ・保存加療で改善がない場合やサイズが大きい場合などには手術加療を行う

  • 疾患編:副鼻腔真菌症

    副鼻腔真菌症は、副鼻腔内に真菌(カビ)が感染し炎症を起こす状態です。 真菌は普段私たちの周囲に存在し、通常は健康な人には問題を引き起こしませんが、免疫が弱っている時など、特定の状況下において感染症を引き起こすことがあります。 原因: 副鼻腔真菌症の主な原因は環境中に存在するさまざまな真菌です。 人間の副鼻腔は通常、これらの真菌を防御するための防御機構を持っていますが、何らかの理由でその機能が低下すると、真菌は副鼻腔内で増殖し、炎症を引き起こします。 この機能低下の一例としては、免疫抑制状態、糖尿病、慢性的なステロイド使用、長期的な抗生物質使用などがあげられます。 病態: 副鼻腔真菌症は非浸潤性と浸潤性の二つに大別されます。 非浸潤性では、慢性的な経過をたどり、免疫状態は正常でも起こります。副鼻腔内に真菌塊(寄生性副鼻腔真菌症)が形成されたり、真菌に対するアレルギー反応(アレルギー性副鼻腔真菌症)を起こします。 浸潤性では、真菌が組織を急速に侵食し拡大し(急性浸潤性副鼻腔真菌症)、または慢性に進行します(慢性浸潤性副鼻腔真菌症)。重篤な場合が多く、早急に治療を行うことが必要とされます。 症状: 鼻づまり、鼻水、顔の痛みや圧迫感、頭痛、嗅覚障害などが一般的な症状です。 浸潤性副鼻腔真菌症では、これらの症状に加えて強い痛みを伴うことが多く、ときに目の見え方の異常や、目の動きの異常、しびれなどの神経症状を伴います。 必要な検査とその所見: 診断は患者の症状や診察の所見、血液検査・培養検査、画像検査(CTやMRI)、そして時には生検や鼻腔・副鼻腔の内視鏡検査によって行われます。 画像検査は非常に有効で、副鼻腔内の真菌塊や組織の侵食を評価します。また、組織の一部をとる、生検により、真菌の存在と種類を確認することができます。 また、血液検査で、真菌に関連した項目を測定する場合もあります。 鑑別疾患: 症状が類似した疾患としては、鼻茸症、慢性副鼻腔炎、急性副鼻腔炎、副鼻腔腫瘍などの他の副鼻腔疾患と鑑別を行う必要があります。 治療法: 治療法としては、手術加療が基本になります。 非浸潤性副鼻腔真菌症の治療は主に手術で、内視鏡下に手術を行うことが多く、副鼻腔内の真菌塊を取り除くことを目指します。 浸潤性副鼻腔真菌症では、強力な抗真菌薬の使用と感染部位の手術的除去が必要となります。また、患者の基礎疾患や免疫状態の管理も重要な部分を占めます。 組織に浸潤している場合に、急速に病態が進行することも多く、完全な切除が難しい場合があります。免疫状態や周囲への浸潤の程度などが、予後に大きく影響します。 治療における注意点: 副鼻腔真菌症の治療においては、副鼻腔手術には特定のリスクが伴うこと(感染の広がり、視力障害、脳への影響など)、抗真菌薬には副作用があること、基礎疾患の管理が必要なことなどを注意深く考慮する必要があります。また、免疫抑制状態の患者では、治療の進行と共に感染が広がる可能性があるため、特に注意が必要です。 Point ・副鼻腔真菌症は、副鼻腔内に真菌(カビ)が増殖し炎症を起こす状態 ・免疫状態は正常でも起こりうる非浸潤性と免疫状態が関連する浸潤性に分けられる ・浸潤性ではとくに重篤な場合があり、ときに命にかかわる ・治療の基本は手術加療であるが、浸潤性では全身的な治療が長期間に渡り必要となる

  • 疾患編:副鼻腔乳頭腫

    副鼻腔乳頭腫(ふくびくうにゅうとうしゅ)は、副鼻腔に発生する良性腫瘍で、まれな腫瘍の一つです。良性腫瘍ですが、再発することや、まれに癌を合併することがあり、早期の診断と適切な治療が必要とされます。 原因について 乳頭腫の原因ははっきりわかっていませんが、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関与している可能性があります。 また、副鼻腔の慢性炎症によって、腫瘍の発生を促す可能性も報告されています。 症状について 副鼻腔乳頭腫の一般的な症状は以下の通りです: 鼻づまりや鼻閉感:腫瘍が鼻の通り道を占拠することで生じます。 鼻出血:腫瘍から出血すると生じます。 嗅覚の低下:においの通り道を腫瘍が占拠すると生じます。 鼻の通り道を塞ぐことで、副鼻腔炎が生じ、頭痛や頭重感、鼻漏などの症状もみとめます。 検査と所見 副鼻腔乳頭腫の診断には、以下の検査が一般的に行われます: 鼻内視鏡検査:副鼻腔の内部を観察し、腫瘍の有無を確認します。 組織生検: 病変組織を採取し、病理学的な評価を行います。 副鼻腔乳頭腫の所見は、病理学的に複数のタイプがあり、細胞の特徴や腫瘍の性質が評価され、確定診断が行われます。 血液検査:SCCとよばれる腫瘍マーカーが上昇することがあります。 鑑別疾患 副鼻腔乳頭腫の症状は、他の鼻腔や副鼻腔の疾患と類似していることがあります。 とくに、鼻腔ポリープ、慢性副鼻腔炎、他の腫瘍性疾患(鼻腔癌など)などと鑑別する必要があります。 この場合、組織を実際にとる生検が重要となります。組織の一部をとっていますが、一回の生検で診断が確定しないこともあります。 【治療法】 副鼻腔乳頭腫の治療としては一般的には、手術加療が行われます。 手術では、腫瘍を完全に取り除くことを目標としており、内視鏡下に手術が行われることが多いです。腫瘍のサイズが大きい場合や周囲の組織に広がっている場合は、内視鏡だけでなく、歯茎や顔の皮膚を一部切開して腫瘍を取り除く手術も行われます。 治療における注意点 ・腫瘍の再発や悪性腫瘍の可能性 副鼻腔乳頭腫の治療における注意点としては、基本的に良性腫瘍ですが、再発することやまれに癌を合併することがあることです。そのため、手術を行なっても再発することがあり、早期の診断や適切な治療、術後の経過観察が重要となります。 ・診断確定の困難性 生検による組織検査は、腫瘍のごく一部を観察するものであり、手術後の組織検査の結果と異なる場合があります。癌を合併することもある腫瘍のため、手術は診断を確定するためにも必要となります。 癌を合併した場合、追加の手術や放射線治療などを検討します。 副鼻腔乳頭腫に関する詳細な情報と適切な治療法については、専門医に相談してください。 Point ・副鼻腔乳頭種は副鼻腔に発生する良性腫瘍の一つで、HPVが関与している ・鼻の通り道を塞ぐことで鼻閉や嗅覚の低下、片側の鼻出血などの症状をひきおこす ・再発や癌の合併をすることがあり、適切な治療と慎重な術後経過が必要となる

  • 疾患編:「急性喉頭蓋炎」

    【概要】 急性喉頭蓋炎とは、のどの一部である喉頭蓋(こうとうがい)に炎症が起こることです。のどは狭く、喉頭蓋が腫れてしまうと息の通り道を塞いでしまうため、発熱や咳、声がかすれるなどの症状のほかに、場合によっては呼吸困難が生じることがあります。重症の場合には窒息する可能性もあるため、緊急で気道を確保する必要があります。 【原因や病態について】 急性喉頭蓋炎は主に感染症によって、炎症が拡がることで起こり、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルスなどのウイルス感染や細菌感染が原因となることがあります。 また、割合は少ないですが、アレルギーによる免疫反応や物理的な刺激や熱傷による原因も報告されています。 喉頭蓋部位に炎症が生じ、喉頭蓋部位が腫れ上がることによって、 ・咽頭痛(のどが痛い) ・飲み込みづらい ・声がかすれる ・咳がでる などの症状がでます。 重症化すると、話しづらい、呼吸困難などの症状も現れます。 【必要な検査とその所見について】 症状と喉頭の炎症や腫れを確認することで、診断を行います。 診察では、喉頭ファイバー検査を行い実際に、のどのどこに、どの程度の炎症や腫れがあるのかを確認します。 また、喉以外の部位の感染や炎症を評価するために、血液検査やX線検査、CT検査などの画像検査も行われることがあります。 【鑑別疾患について】 急性喉頭蓋炎の鑑別疾患としては、以下のような疾患が挙げられます。 ・喉頭炎 ・気管支炎 ・扁桃炎 ・喉頭癌 ・リンパ腫 これらの疾患は症状や検査所見などが似ている場合もあるため、正確な診断を行うためには慎重な診察と検査が必要です。 【治療方法について】 急性喉頭蓋炎の治療には、原因となるウイルスや細菌に対する抗菌薬や抗炎症薬が用いられます。また、症状の緩和のために喉の消毒や加湿、鎮痛剤などが処方されることもあります。 ただし、重症例では気道がせまくなることによって、窒息する可能性があるため、迅速な処置が必要となります。 気管挿管や気管切開などの気道確保を行い、呼吸器による管理が必要になる場合もあります。また、他の部位に膿瘍がある場合では、頸部の皮膚を切開して膿を出す手術など、その治療も合わせて行うことがあります。 【治療を考える際の注意点】 急性喉頭蓋炎の治療においては、基本的には症状が重い場合には入院治療が必要となります。特に、気道閉塞の危険がある場合には速やかな治療が必要です。 症状がひどくなる前に、早期の診察や治療開始が望ましいです。 Point ・急性喉頭蓋炎は、のどにある喉頭蓋に炎症がおきるもので、感染が原因となることが多い ・喉はせまいため、喉頭蓋が腫れることで重症例では窒息の可能性もある ・迅速な処置が必要となり、場合によっては気管挿管や気管切開などの気道確保や呼吸器による管理が適応となる

  • 疾患編:「リンパ管腫」

    リンパ管腫は、リンパ管やリンパ節に発生する奇形の一種で、小児期に発生することが多い疾患です。”腫”と書いてあるため、腫瘍のように思われるかもしれませんが、リンパ液を入れた袋状のものが大きく腫脹してできるものです。 リンパ管腫の原因は明らかではありませんが、リンパ管の異常な増殖によって発生すると考えられています。遺伝的な要因も関与している可能性があります。 【症状について】 成人でも発生することがありますが、小児期に多く、頭頸部にできることが7割以上を占めます。腫脹が進んでしまうと、周りの組織を圧排してしまい、呼吸や食事に影響を与えたり、出血や感染を引き起こす原因にもなることがあります。 そのため、サイズや生じる部位が重要となり、それによって起こる症状の内容や重症度が変わってきます。また、治療方法にも大きく影響します。 【治療方法】 リンパ管腫の治療方法は、腫瘍の大きさ、場所、症状などによって異なります。 小さいものでは、自然に小さくなってしまうこともあり、他の症状がない場合には経過をみていくことが多いです。 一方、サイズが大きく、呼吸や食事、感染などの症状がある場合には、治療が必要となります。 方法としては、硬化療法や、リンパ管腫の摘出術が行われます。 硬化療法では、ピシバニール(OK-432)と呼ばれる薬剤をリンパ管腫の内部に注入し、炎症を起こすことで、サイズの縮小や消退を図ります。 リンパ管腫の摘出術は、サイズや部位によって難易度が大きく変わります。完全に取り切ることが難しい場合も多く、頸部の操作を行う場合には他の組織を傷つけてしまう可能性もあります。 リンパ管腫は再発する場合もありますので、治療方針は慎重に決めていく必要があります。その反面、息の通り道を圧排してしまう場合には致命的な状態につながるため、早急にサイズの縮小や気道確保を図る必要があり、しっかりとした状況の把握と方針の決定が求められます。 【生活での影響と注意点】 リンパ管腫が皮膚や筋肉の下にある場合、通常の生活に影響はありません。しかし、腫瘍が大きくなると、圧迫症状や出血などを引き起こすことがあります。 また、手術後には経過観察が必要です。定期的な検査を受け、再発を早期に発見するようにしましょう。 Point ・リンパ管腫は、リンパ液を入れた袋状のものが大きく腫脹したもので、子供の頭頸部にできることが多い ・サイズや部位によって重症度は異なり、呼吸や食事に影響を与えたり、感染や出血をおこす可能性がある ・サイズが小さい場合は経過観察を行うが、他の症状がある場合には硬化療法や外科的な治療が適応となり、気道を狭くする場合には気管挿管や気管切開が必要になる

  • 疾患編:「鼻腔ポリープ」

    鼻腔ポリープとは、鼻の粘膜にできる粘液を含んだポリープ状の腫瘤のことで、鼻茸とも言われます。アレルギーや慢性鼻炎、副鼻腔炎などの炎症によって発生することが多いです。 大人だけでなく、こどもでもできるもので、慢性的な鼻づまりや嗅覚障害、頭痛などの症状が現れます。 また、鼻の通り道を塞いでしまうことで、さらに副鼻腔炎をひどくしてしまう要因ともなります。 【原因について】 鼻腔ポリープの原因はまだ完全に解明されていませんが、アレルギーや慢性鼻炎、副鼻腔炎などの炎症が長期間続くことで起こることが多いとされています。 鼻腔内の炎症が続くことで、粘膜が腫脹し、ポリープが成長してしまうと、鼻腔の通り道を塞いで、鼻づまりや呼吸困難を引き起こすことがあります。 【必要な検査とその所見について】 鼻腔ポリープの診断には、鼻内からの診察や、鼻腔内視鏡検査が主に行われます。 ポリープがどこにあるのか、そして、どの程度の大きさなのかについて確認します。また、アレルギー検査や血液検査などが必要に応じて行われることもあります。 鼻腔ポリープではとくに、慢性副鼻腔炎に伴うことが多く、喘息などと関連する好酸球性副鼻腔炎でもよくみとめます。副鼻腔の精査のために、CT検査を行うこともあります。 また、鼻や副鼻腔にできる腫瘍性病変との鑑別が必要になるため、場合によっては、組織の一部をとって顕微鏡で確認をする病理検査も行います。 【治療方法】 治療方法については、症状を指標として方針を決定します。 鼻閉や嗅覚障害などが軽度であれば、ひどくならないか経過をみたり、抗アレルギー薬やステロイド点鼻薬の投与を行います。 一方、サイズが大きく、鼻閉や嗅覚障害の症状が重い場合は手術加療が検討されます。また、副鼻腔炎に伴うことが多く、副鼻腔炎の治療に合わせて行う例もあります。手術では、内視鏡下にポリープを摘出します。 治療を考える際の注意点としては、ポリープが再発する可能性があることや、手術のリスクがあることが挙げられ、これらを考慮した上で方針を決めていく必要があります。 Point ・鼻腔ポリープは鼻の粘膜にできる粘液を含んだポリープ状の腫瘤のことで、鼻茸ともいう ・副鼻腔炎に伴うことが多く、ポリープがあることで道を塞いでしまい、さらに副鼻腔炎を増悪させることもある ・治療として、症状がひどい場合には手術加療が選択肢となるが、再発する可能性も考慮した上で決定する

  • 疾患編: 耳下腺腫瘍

    耳下腺腫瘍は、唾液腺の一種である耳下腺から生じる腫瘍のことを指します。 比較的まれな疾患ですが、小児期にも発生することがあります。一般的に良性の腫瘍である場合が多く、病理組織的な種類は多様で、2017年のWHO分類では唾液腺にできる腫瘍を11種類の良性腫瘍、21種類の悪性腫瘍などに分けています。 【主な症状】 耳下腺腫瘍では、良性腫瘍の場合、痛みや発熱などの症状がないため、小さいうちはわからないこともあります。耳の下側が腫れていることにより気づかれる場合が多く、腫瘍が大きくなると、耳下腺の周囲の筋肉や神経を圧迫して症状を引き起こすことがあります。 特に、顔を動かす神経である顔面神経が耳下腺の周囲を走っているため、顔の一部や半分の動きが悪くなってしまう顔面神経麻痺の症状には注意する必要があります。 腫瘍が悪性腫瘍である場合には、痛みや周囲組織との癒着、顔面神経の麻痺といった症状をみとめます。また、周囲の組織やリンパ節に転移することがあるため、首の腫れなども伴うことがあります。 【必要な検査とその所見について】 腫瘍がどこに、どれくらいの大きさであって、その周囲の組織との関連はどうかといったことについて検査で判断していきます。 まずは身体診察で、腫瘍の形状や触感、動きやすさ、痛みや圧痛の有無、リンパ節の腫れの有無などを調べることが重要です。 また、エコー検査やMRI検査、CT検査などの画像診断を行うことで、腫瘍の大きさや形状、位置関係、周囲の組織の状態などを詳しく評価することができます。 診断のためには、組織や細胞の一部分を顕微鏡で確認する病理検査が必要となり、腫瘍の細胞診検査や組織診断検査も行います。 針生検での検査では、良悪性の判断が難しい場合もあり、最終的には手術によって摘出した腫瘍をみることで診断がえられます。 【治療方法について】 耳下腺腫瘍の主な治療方法は、手術加療による摘出が中心となります。 手術の際には、病変の大きさや部位、周囲の組織の状態などを考慮して、適切な手術法を選択します。一般的には、耳の後から下部分の皮膚を切開して、腫瘍を摘出する方法が行われます。 良性腫瘍であれば、顔面神経の温存と完全な腫瘍の摘出を目的として、耳下腺を含めた腫瘍を切除することが一般的です。 悪性腫瘍の場合は、腫瘍の完全な摘出を第一に手術を行います。腫瘍の進展や種類によって、顔面神経を温存するために腫瘍の一部を残して、放射線療法などの複合的な治療が必要となる場合もあります。 手術の前に診断がつかない場合では、手術中に迅速病理を出して、その結果をもとに方針を決めるため、術前の方針と異なる可能性に注意する必要があります。 また、術中の病理検査でも診断がつかない場合があることにも留意する必要があります。 【治療を考える際の注意点】 治療を考える際には、病状の程度や治療法による副作用などを含め、リスクと利益を慎重に考慮する必要があります。 例えば、耳下腺腫瘍の治療によって、顔の神経が損傷した場合には、食事が漏れてしまったり、表情が変わることがあるため、精神的なストレスを感じることがあります。手術後のケアやリハビリテーションにも注意が必要です。 治療法の選択にあたっては、耳鼻科専門医としっかりと相談し、方針を決めていくことをお勧めします。 Point ・耳下腺腫瘍は、唾液腺の一種である耳下腺から生じる腫瘍で、こどもにも発生することがある ・耳の下部分の腫れで気づくことが多く、サイズが小さいときはわからないことも多い ・病理のタイプは様々で、検査では診断がつかず、最終診断は手術によって摘出した所見をもとにわかることが多い ・治療としては、手術による摘出が基本となり、とくに顔を動かす神経の取り扱いについて注意する必要がある

  • 疾患編:良性発作性頭位めまい症(BPPV)

    【概要】 良性発作性頭位めまい症 (Benign Paroxysmal Positional Vertigo, BPPV) は、めまいを起こす疾患の一つで、頭部を特定の方向に動かしたときに短時間のめまいが起きることが特徴です。 頭を傾けたり、起き上がったりしたときに、めまいやふらつき、それに伴う吐き気などの症状が現れます。BPPVは、一般的なめまいの原因の1つであり、特に高齢者に多く見られます。小児ではそれほど頻度は多くありません。 【原因と病態】 BPPVの原因は、内耳の一部である前庭器官(卵形嚢、球形嚢など)においてカルシウムの粒(耳石:じせき)が異常な位置に存在することでおこります。 これにより、頭の動きに対する刺激が増幅されてしまうことにより発生します。また、頭部外傷や内耳の感染症、加齢、長時間の寝たきり生活など、様々な原因が考えられます。 病変がある部位によって、外側半規管や後半規管と分けたり、耳石の浮遊物debrisが迷入する半規管結石症やdebrisがクプラに付着するクプラ結石症に分けます。 【必要な検査とその所見について】 BPPVの診断には、眼振と呼ばれる目の動きをみる検査が非常に重要です。頭の位置を動かしたことで、この眼振が誘発されることが特徴となるため、この頭位変換眼振(とういへんかんがんしん)を診察でみていく必要があります。 また、他のめまいを起こす疾患との鑑別のために、平衡機能検査や聴力検査が行われる場合もあります。 BPPVの分類ごとの診断は非常に難しく、専門医による診察が大切といえます。 【鑑別疾患について】 めまいを症状とする原因は様々あり、BPPV以外にも小児では、良性発作性めまいや起立性調節障害など、頻度の高いものや脳幹や小脳の疾患などの中枢性のものがあります。 これらの疾患は、それぞれに特有の症状や検査所見があります。 【治療方法について】 BPPVの治療方法には、理学療法が主体となります。 薬物療法によって、めまいの症状を抑えることはできますが、耳石を動かしているわけではなく根本的な治療とはいえません。 理学療法では主に、頭の位置を変える治療を行います。これは、BPPVの原因によって、方法が異なりますので、しっかりと診断をつけることが、適切な治療へとつながることになります。 Point ・BPPVは、一般的なめまいの一つで、頭の位置を変えることで誘発されることを特徴とする ・内耳の耳石の異常によって引き起こされ、病態によって、めまいがひどくなる頭の位置が異なる ・それぞれに合わせた理学療法が必要となるため、しっかりとした診断をつけることが重要である

  • 疾患編: 慢性扁桃炎

    概要: 慢性扁桃炎は、扁桃腺の炎症により引き起こされる疾患で、慢性的に症状が続くものを指します。主な症状には喉の痛み、嚥下痛、発熱、口臭、扁桃腺の腫れや膿栓などがあります。 原因や病態について: 扁桃腺は免疫に関連した組織で、アレルギーや空気中の異物に対する過剰な反応、口腔内の細菌感染、または栄養不良による免疫力低下などによって、炎症を引き起こします。慢性的に炎症が起こることで、大人になっても炎症が続いてしまうことやある程度の大きさに肥大してしまう原因となります。 また病巣扁桃といって、腎炎や掌蹠膿疱症といった免疫の異常による全身への負担へとつながる場合もあります。 必要な検査について: 慢性扁桃炎の診断には、症状や身体所見に基づく診察が主要な方法です。また、細菌感染を疑う場合には、扁桃腺の膿などから細菌培養の検査や血液検査を行うことがあります。 鑑別疾患について: 慢性扁桃炎の症状は、他の疾患と重複することがあります。 具体的には、急性扁桃炎、上咽頭炎、口内炎、扁桃腺癌などが挙げられます。どこに炎症があるかは診察でわかるので、症状が持続する場合には、診断を受けることが重要です。 治療方法について: 慢性扁桃炎の治療法には、保存的な治療と手術的治療があります。 保存的な治療は、症状に合わせた鎮痛剤や抗炎症剤、塩水うがいなどや抗菌薬による薬物療法が含まれます。 これらの治療は、症状を緩和することができますが、根本的な問題を解決することはできません。 手術的治療には、扁桃摘出術があります。 扁桃摘出術は、一般的に病気の症状が頻繁に起こる場合や、治療が効果的でなかった場合に考慮されます。年に4回程度以上扁桃炎を繰り返す習慣性扁桃炎や、扁桃周囲膿瘍にかかった例では、今後も炎症を繰り返す可能性があるため、手術をお勧めします。 手術加療では、口蓋扁桃を摘出することで、病気の再発率を減らし、症状を改善することができます。 治療を考える際の注意点: 保守的治療は、重度の症状のある場合には不十分であることがあります。 また、長期間使用すると副作用が出る可能性があります。手術的治療は、病気の再発率を減らすことができますが、手術後の合併症のリスクがあるため、手術を検討する場合には医師との相談が必要です。手術には、麻酔や手術後の食事の制限などのリスクや制限があります。 Point ・慢性扁桃炎は、慢性的に扁桃腺の炎症が続くことで、喉の痛み嚥下痛、発熱、扁桃肥大をひきおこす ・病巣扁桃といって、免疫異常により扁桃腺だけでなく全身に影響が出る場合がある ・年に4回程度扁桃炎を繰り返したり、扁桃周囲膿瘍に至る例では口蓋扁桃摘出術の適応となる

  • Q&A: 鼻腔吸引ってやったほうがいいの?鼻水はどうやってとるの?

    鼻腔吸引は、鼻水や粘液を取り除くための一般的な方法の1つです。 特に小さな子供たちは、自分で鼻をかむことができず、鼻水が詰まることがあります。そのため、鼻腔吸引は効果的な方法の1つとされています。 鼻水が溜まってしまうと、たとえば以下のような症状に繋がってしまいます。 ・呼吸がしづらくなる ・その影響で哺乳や食事に制限がでる ・中耳炎の原因になる ・鼻すすり癖がでることがあり、長期的に耳の圧調整に制限がでる 鼻が出ること自体は正常でもあるのですが、とくに汚い鼻を溜めたまま、置いておくことは避けた方がよいと言えます。 耳鼻咽喉科の診察室では、吸引が行えるような機械や器具が揃っていますが、頻回の処置には移動の制限などから難しい場合があります。 市販のものでも、吸引力が適切に調整されており、鼻や粘膜を傷つけることが少なく、安全に使用できるものがあります。 鼻腔吸引を行う際には、専用の鼻吸引器具を使用することをお勧めします。 鼻腔吸引を適切に行わないと、鼻の粘膜を傷つけてしまったり、鼻の乾燥や刺激を引き起こす可能性があります。そのため、必要に応じて耳鼻咽喉科医に相談し、適切な方法で行うことが重要です。 また、鼻水を取り除くだけでなく、鼻腔内の粘膜を保湿することも重要です。 保湿剤や塩水スプレーを使用することで、鼻腔内を湿らせることができ、炎症を軽減し、症状を和らげることができます。 重度の鼻づまりや症状が持続する場合には、医師に相談することをお勧めします。

  • 疾患編:突発性難聴

    突発性難聴とは、突然、耳の聞こえが悪くなる疾患のうち、原因が明らかでないものを指します。きこえにくさは人によって様々で、全く音が聞こえなくなる場合や、わずかに聞こえにくい場合などがあり、難聴に気が付くのが遅れてしまうこともあります。 主な症状としては、耳鳴り、耳の詰まり感、聞こえにくさの他に、めまいを訴える場合があります。 突発性難聴の原因は明らかになっていませんが、ストレス、睡眠不足などが関連しており、内耳の血行障害やウイルス感染が原因と考えられています。 突発性難聴の診断には、まず、症状や経過を詳しく聞き取ることが重要となります。そして、聴力検査や画像検査で、聴力の程度や他の原因がないかを確認します。 【鑑別疾患について】 突発性難聴の症状は、他の病気でも類似して同様の症状が現れることがあるため、突発性難聴の診断には、他の病気との鑑別が必要となります。 症状が類似している疾患の例としては ・メニエル症候群 ・聴神経腫瘍 ・薬剤性難聴 ・脳腫瘍や脳血管障害 などが挙げられます。 【治療方法について】 突発性難聴の治療は、早期に開始することが重要です。 報告によって様々ですが、発症してから1-2週間以内に治療を行うと、治療効果が高いとされています。( Chen et al.,Front Neurol. 2023 )。時期が遅れれば遅れるほど、治療の効果が乏しく、聴力が戻らない可能性があるとも言えます。 突発性難聴の治療方法としては、ステロイド剤の内服や注射が一般的です。また、血管拡張剤や抗ウイルス薬、ビタミン剤、代謝促進薬なども併用して治療を行います。中には鼓室内にステロイドを投与する方法を採用する場合もあります。 ステロイドによる加療を行う場合には、その副作用にも注意する必要があります。通常は1週間程度の加療になるので、長期的な成長障害などの影響は少ないですが、血糖や血圧、消化器などへの影響をみながら加療をしていきます。 【治療を考える際の注意点】 突発性難聴の治療にあたっては、以下の点に注意する必要があります。 ・早期に治療を開始することが大切であるが、回復しない場合もあること ・ステロイド剤による治療が有効であること ・ステロイド剤による治療によって副作用が発生することがあること 【生活への影響と注意点】 突発性難聴によっては、聴力が低下することで、生活に様々な影響が出ることがあります。こどもでは、学校でのコミュニケーションや学習に影響が出てしまう可能性もあり、早期の診断と治療がよりいっそう必要と言えます。 Point ・突発性難聴は突然耳の聞こえが悪くなる疾患の中で、原因が不明なものの総称 ・他疾患の除外が必要となり、症状や既往、聴力検査や画像検査などを行う ・早期の治療開始が、治療効果に影響し、ステロイドによる加療が一般的である

  • 疾患編:扁桃周囲膿瘍

    扁桃周囲膿瘍は、扁桃腺の周りで感染がひどくなり、膿が溜まってしまう疾患です。 扁桃腺は、口の奥にあり、免疫機能を担っています。外部から侵入する病原菌を排除するために白血球が集まり、病原菌と戦う際に化膿が生じ、扁桃腺の周囲に膿瘍を形成することがあります。 【原因やその病態について】 扁桃周囲膿瘍は扁桃炎や扁桃周囲炎といった炎症がひどくなることで起こります。炎症が起きる原因としては、主に以下のものが挙げられます。 ・細菌感染:主にレンサ球菌や肺炎球菌、ブドウ球菌などが原因となります。 ・ウイルス感染:アデノウイルスやエンテロウイルスなどが原因となります。 ・免疫力低下: 免疫力が低下した状態では、病原菌に対する抵抗力が低下するため、感染がひどくなりやすくなる可能性があります。 扁桃周囲膿瘍は、扁桃腺周囲の炎症が進行して、膿瘍が形成されます。炎症の進行によって、扁桃腺の周囲にあるリンパ節やさらに気道の深い組織へと炎症が広がることがあります。 【症状や検査について】 扁桃周囲膿瘍では、早期に診断と治療を受けないと合併症を引き起こす可能性があるため、迅速な対応が必要です。 扁桃炎や扁桃周囲炎との違いをみる必要があり、そのためにはまず症状が重要となります。 どちらも喉の痛みや腫れ、発熱を伴いますが、扁桃周囲膿瘍では ・口が開きづらい ・ものが飲み込めない ・喉の片方が痛くなり、話づらい ・呼吸がつらい などの症状が認められます。 体の症状と診察に加え、血液検査やCTスキャンなどの画像検査によって検査を行います。 重症の場合には、首の中で膿が広がってしまったり、炎症によって気道を狭くしまい、息が苦しくなったりしてしまいます。(深頸部膿瘍、急性喉頭蓋炎) 【治療について】 軽度の扁桃周囲膿瘍は、抗生物質の投与で治療できる場合があります。 ただし、膿を形成すると、薬剤の効果が乏しいことも多く、症状が重い場合や抗生物質の投与で治療が進展しない場合では、手術によって膿を出すことが必要になります。 こどもの場合、全身麻酔下で行うことが多く、手術では、扁桃腺の周囲の粘膜を切開して、膿を除去します。 さらに、手術を受けた場合は、手術後の経過をきちんと管理し、症状がひどくならないか、定期的な診察を受けることが必要です。 Point: ・扁桃周囲膿瘍は、扁桃炎や扁桃周囲炎から炎症が進行し、扁桃腺の周りに膿がたまってしまうこと ・症状が進行すると、首の中で膿が広がったり、息の道を狭くしてしまうため、早期の受診と治療が必要になる ・治療では、切開して膿を出してあげることが必要となる場合があり、こどもでは全身麻酔で行うことが多い

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