副鼻腔真菌症は、副鼻腔内に真菌(カビ)が感染し炎症を起こす状態です。
真菌は普段私たちの周囲に存在し、通常は健康な人には問題を引き起こしませんが、免疫が弱っている時など、特定の状況下において感染症を引き起こすことがあります。
原因
副鼻腔真菌症の主な原因は環境中に存在するさまざまな真菌です。
人間の副鼻腔は通常、これらの真菌を防御するための防御機構を持っていますが、何らかの理由でその機能が低下すると、真菌は副鼻腔内で増殖し、炎症を引き起こします。
この機能低下の一例としては、免疫抑制状態、糖尿病、慢性的なステロイド使用、長期的な抗生物質使用などがあげられます。
病態
副鼻腔真菌症は非浸潤性と浸潤性の二つに大別されます。
非浸潤性では、慢性的な経過をたどり、免疫状態は正常でも起こります。副鼻腔内に真菌塊(寄生性副鼻腔真菌症)が形成されたり、真菌に対するアレルギー反応(アレルギー性副鼻腔真菌症)を起こします。
浸潤性では、真菌が組織を急速に侵食し拡大し(急性浸潤性副鼻腔真菌症)、または慢性に進行します(慢性浸潤性副鼻腔真菌症)。重篤な場合が多く、早急に治療を行うことが必要とされます。
症状
鼻づまり、鼻水、顔の痛みや圧迫感、頭痛、嗅覚障害などが一般的な症状です。
浸潤性副鼻腔真菌症では、これらの症状に加えて強い痛みを伴うことが多く、ときに目の見え方の異常や、目の動きの異常、しびれなどの神経症状を伴います。
必要な検査とその所見
診断は患者の症状や診察の所見、血液検査・培養検査、画像検査(CTやMRI)、そして時には生検や鼻腔・副鼻腔の内視鏡検査によって行われます。
画像検査は非常に有効で、副鼻腔内の真菌塊や組織の侵食を評価します。また、組織の一部をとる、生検により、真菌の存在と種類を確認することができます。
また、血液検査で、真菌に関連した項目を測定する場合もあります。
鑑別疾患
症状が類似した疾患としては、鼻茸症、慢性副鼻腔炎、急性副鼻腔炎、副鼻腔腫瘍などの他の副鼻腔疾患と鑑別を行う必要があります。
治療法
治療法としては、手術加療が基本になります。
非浸潤性副鼻腔真菌症の治療は主に手術で、内視鏡下に手術を行うことが多く、副鼻腔内の真菌塊を取り除くことを目指します。
浸潤性副鼻腔真菌症では、強力な抗真菌薬の使用と感染部位の手術的除去が必要となります。また、患者の基礎疾患や免疫状態の管理も重要な部分を占めます。
組織に浸潤している場合に、急速に病態が進行することも多く、完全な切除が難しい場合があります。免疫状態や周囲への浸潤の程度などが、予後に大きく影響します。
治療における注意点
副鼻腔真菌症の治療においては、副鼻腔手術には特定のリスクが伴うこと(感染の広がり、視力障害、脳への影響など)、抗真菌薬には副作用があること、基礎疾患の管理が必要なことなどを注意深く考慮する必要があります。また、免疫抑制状態の患者では、治療の進行と共に感染が広がる可能性があるため、特に注意が必要です。
- 副鼻腔真菌症は、副鼻腔内に真菌(カビ)が増殖し炎症を起こす状態
- 免疫状態は正常でも起こりうる非浸潤性と免疫状態が関連する浸潤性に分けられる
- 浸潤性ではとくに重篤な場合があり、ときに命にかかわる
- 治療の基本は手術加療であるが、浸潤性では全身的な治療が長期間に渡り必要となる