「何を食べても味がしない」「味の違いがわからない」と感じたら、味覚障害の可能性があります。味覚障害は、コロナ風邪インフルエンザなどの感染後に起こることがあるほか、亜鉛不足、薬の副作用、口の乾燥、ストレスなど、さまざまな原因で起こります。味覚障害では嗅覚障害に伴う風味障害が関わることも多く、病歴聴取では嗅覚障害の有無を確認することが重要です。

「味覚障害の治し方は?」「いつ治るの?」「コロナ後でも回復する?」と不安になる方も多いでしょう。

この記事では、味覚障害の原因や治し方、”いつ治るのか”など、気になるポイントを詳しく解説します。

POINT
  • 味覚障害の原因は、亜鉛欠乏、ウイルス感染後、薬剤、口腔乾燥、全身疾患、ストレスなどさまざま
  • コロナ後や風邪後、インフルエンザ後に味覚異常を感じることがあるが、嗅覚障害が関わる場合もある
  • 治し方は原因ごとに異なり、低亜鉛血症があれば亜鉛補充が検討される。回復時期には個人差が

味覚障害は原因によっては早期改善も期待できます。症状が出たら自己判断せずに耳鼻咽喉科へ相談しましょう。

味覚障害の主な症状

味覚障害には量的異常と質的異常があり、感じ方は人によってさまざまです。

  • 味覚減退:味が薄く感じる
  • 味覚脱失:完全に味がしない
  • 解離性味覚障害:特定の味(例:塩味)だけわからない
  • 異味症:本来と異なる味に感じる(例:甘いものが苦く感じる)
  • 自発性異常味覚:何も食べていないのに味がする
  • 悪味症:常に嫌な味を感じる

こうした症状は風邪やコロナ、インフルエンザの回復期に突然現れることがあります。味覚が戻らないことで食事が楽しめず、食欲不振や栄養不良につながるケースも少なくありません。

味覚障害の原因・味覚障害になり易い方

味覚障害の原因・味覚障害になり易い方

味覚障害の原因は多岐にわたります。

主な原因

  • 亜鉛欠乏:味蕾の再生に必要な栄養素。欠乏により味覚機能が低下。
  • ウイルス感染後:コロナ、風邪、インフルエンザ後に一過性の味覚異常が起こることがある。
  • ストレスや心因性:自律神経の乱れや精神的要因も影響。
  • 薬剤の副作用:降圧剤、抗がん剤などが亜鉛吸収を妨げることがある。
  • ドライマウス(唾液分泌低下)や舌炎などの口腔疾患

なりやすい人

  • 60歳以上の高齢者
  • 偏食傾向があり、栄養バランスに偏りがある人
  • ストレスを感じやすい、または不眠傾向がある人
  • 食事内容が簡素で、亜鉛を含む食品(例:レバー、牡蠣、ナッツ類)をあまり摂取していない人
  • 体調不良時に食べやすいバナナなどに頼りがちで、栄養が偏っている人

味覚障害の検査・診断の方法

味覚障害の検査では、以下の方法が使われます。

味覚機能検査

  • 電気味覚検査:舌に電流を流し、味覚の閾値を測定
  • 濾紙ディスク法:甘味、塩味、酸味、苦味を段階的に試験紙で評価
  • 全口腔法:口全体での味の感じ方を確認

血液・その他の検査

  • 亜鉛・銅・鉄・ビタミンB12の血中濃度測定
  • 唾液検査(ガムテスト):ドライマウスの評価
  • 心理検査(SDSなど):心因性の有無を判断
  • MRI・CTなどの画像検査:中枢性障害の除外

検査は簡便なものから専門的なものまでありますが、味覚障害の性質を把握し、治療法を選ぶために重要なステップです。

治療と治癒までの期間

味覚障害の治し方は原因によって異なります。低亜鉛血症があれば亜鉛製剤による補充療法が検討されます。一方で、コロナ後の味覚障害は早期に回復するものもありますが、長引く例もあり、現時点で確立した治療法はないとされています。

項目内容
主な治し方原因の確認、亜鉛不足があれば補充、口腔乾燥や薬剤性の見直し
感染後の対応コロナ後、風邪後、インフルエンザ後は、嗅覚障害の有無も確認する
亜鉛について低亜鉛血症なら亜鉛製剤が検討される
いつ治る?軽症では比較的早く改善することもあるが、数か月以上続くこともある
長引きやすい例薬剤性、心因性、全身疾患に伴うもの、遷延する感染後障害
受診の目安数週間以上続く、食事がとれない、においもわからない場合は耳鼻咽喉科へ

亜鉛補充療法の概要

  • 酢酸亜鉛やポラプレジンクを用いた補充療法(保険適用あり)
  • 50mg/日程度の投与で治療を開始し、3〜6ヶ月継続する例が多い

食事改善と栄養補助について

亜鉛を意識した食事は大切ですが、特に多い食品としては牡蠣、肉類などが代表です。バナナにも亜鉛は含まれますが、生バナナ100gあたり0.2mgで、亜鉛を多く含む代表食品というより、体調不良時にも食べやすい食品として考えるとよいでしょう。

例:牡蠣、レバー、赤身肉、ナッツ類(亜鉛・マグネシウムが含まれる)

その他の治療

  • 漢方薬(麦門冬湯、香蘇散など)
  • 抗不安薬・抗うつ薬(心因性のケース)
  • 唾液分泌促進剤(ドライマウスを伴う場合)

治癒までの期間目安

  • 感冒後や亜鉛欠乏型:20〜24週
  • 薬剤性・心因性:6ヶ月〜1年以上かかることも

早期の治療開始が、回復の鍵となります。

類似症状の病気

味覚障害と似た症状でも、実際には嗅覚障害や口腔乾燥症、心因性の要素が関わっていることがあります。

病気・状態主な特徴ポイント
味覚障害味が薄い、しない、変な味がする亜鉛欠乏、薬剤、感染後、口腔乾燥などが原因になりうる
嗅覚障害においがわからない「味がしない」と感じる原因が嗅覚低下のことも多い
口腔乾燥症口が乾く、味がわかりにくい唾液低下で味物質が届きにくくなる
心因性検査異常が乏しいこともあるストレスや抑うつが関与することがある

味覚障害にならないための予防・日頃のケア

味覚障害にならないための予防・日頃のケア
  • バランスの良い食事(特に亜鉛を意識)
  • 十分な睡眠とストレス対策
  • 感染症予防(手洗い・うがい・ワクチン)
  • 禁煙・節酒

特に高齢者では食生活が偏りがちになるため、定期的な栄養チェックやサプリメントの活用も検討しても良いでしょう。

さいごに

味覚障害は、コロナ、風邪、インフルエンザの後だけでなく、亜鉛不足、薬、口の乾燥、ストレスなどさまざまな原因で起こります。治し方は原因により異なり、いつ治るかにも個人差がありますが、正確な診断と治療により改善が見込める疾患です。

低亜鉛血症では亜鉛補充が検討され、長引く場合は専門的な味覚検査が必要になることもあります。少しでも異変を感じたら早めに耳鼻咽喉科を受診してください。治療を始めれば、元の「味わえる生活」が戻ってくる可能性は十分にあります。

野田 昌生

この記事の監修

野田 昌生(のだ まさお)

  • 自治医科大学 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科 講師
  • 耳鼻科専門医 医学博士