首元にしこりがあるけれど、痛くないし様子見でいいかな……そう思って放置していませんか?実はそれ、正中頸嚢胞かもしれません。特に大人では注意が必要です。

POINT
  • 大人の発症も30歳以上で多数
  • 放置は感染・再発・悪性化の恐れも
  • Sistrunk法による手術で再発防止

首に違和感がある場合は、早期の受診と正確な診断が大切です。次で詳しく解説していきます。

正中頸嚢胞の主な症状

正中頸嚢胞の主な症状

「首の真ん中にしこりがある」「喉仏の下あたりが腫れている」といった症状がよく見られます。多くの場合は痛みがなく、柔らかいしこりとして感じられ、直径1〜3cm程度のことが多いです。しかし、感染を起こすと赤く腫れて痛みが出たり、膿がたまって発熱することもあります。30歳以上で気づくケースが多く、放置すると再発や瘻孔形成のリスクもあります。

正中頸嚢胞になり易い方

正中頸嚢胞は、胎児期に甲状腺が下がる過程で残った甲状舌管が原因で形成される先天性の嚢胞です。通常は10歳以下に見つかることが多いですが、大人になってから感染などを契機に気づかれることも少なくありません。実際に30歳以上での発見が約66%を占めています。風邪や咽頭炎が引き金になることもあり注意が必要です。

正中頸嚢胞の検査/診断の方法

診断は視診・触診に加え、エコー検査、CT、MRIなどの画像検査で嚢胞の性質や範囲を確認します。MRIのT2強調画像では瘻孔の経路まで確認できることもあり、非常に有用です。嚢胞が嚥下や舌の動きとともに動くことが診断のポイントです。感染時は周囲組織の混濁や壁の肥厚も見られます。正確な診断は外来で比較的短期間に可能です。

治療の方法・回復期間の目安

治療の方法・回復期間の目安

治療はSistrunk法と呼ばれる手術が基本です。嚢胞とともに甲状舌管、舌骨の一部も切除することで再発を防ぎます。文献ではこの術式の再発率は約2.6〜3.4%と非常に低いです。手術時間は1〜2時間、術後1週間前後で日常生活に戻れることが多く、2〜3週間での回復が見込まれます。感染がある場合は抗生物質で炎症を抑えた後に手術を行います。

類似症状の疾患

甲状腺腫瘍、リンパ節腫脹、唾液腺のう胞など

類似症状にならないための予防・日頃のケア

風邪や咽頭炎を繰り返すと嚢胞が大きくなるリスクがあるため、早期治療を心がけましょう。首にしこりを感じたら早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。感染を放置せず、瘻孔形成を避けることが後の治療を容易にします。

さいごに

正中頸嚢胞は先天的なものですが、大人になってから見つかることも多く、決して珍しい疾患ではありません。感染や再発を防ぐためにも、早めの診断と適切な手術が重要です。気になる症状があれば、気軽に耳鼻科に相談してみてください。