かゆみを感じて耳を綿棒でこすったところ、液体のようなものが出てきた……これは放っておいて大丈夫なのでしょうか?この記事では、外耳炎や中耳炎、鼓膜損傷などの可能性を解説し、具体的な症例やセルフケアのポイント、専門医への受診タイミングについて詳しくご紹介します。

POINT
  • 液体の正体を解説:外耳炎・中耳炎・鼓膜損傷のメカニズム
  • 症例紹介:実際の患者さんケースから学ぶ
  • セルフチェック&ケア:自宅でできる初期対応ガイド
  • 専門医の対策Q&A:よくある疑問を一問一答でスッキリ
  • 予防と再発防止:習慣改善とプロのアドバイス

液体が出るメカニズム

綿棒による刺激で外耳道の皮膚に小さな傷がつくと、そこから細菌が侵入して外耳炎が起き、炎症性の滲出液が分泌されることがあります。また、鼓膜に小さな穴が開いてしまう『慢性穿孔性中耳炎』では、中耳で生じた炎症性の分泌液が外耳道へ漏れ出し、液状の耳漏として観察されることがあります。

さらに、強い物理的刺激や急激な圧力変動で鼓膜自体が破れると、漿液性の液体や血液が混じる場合もあります。いずれの場合も、放置すると耳小骨の癒着や内耳への炎症波及による難聴リスクが高まるため、早めの対応が肝心です。

症例紹介:リアルケースで学ぶ

実際、こういう症状が出た人にはこんなケースがあるんです

30代の女性Aさんは、かゆみ解消のために綿棒で耳をこすった後、黄白色の耳漏を認めました。診断は外耳炎で、抗菌点耳薬と外耳洗浄を1週間行ったところ、症状は速やかに改善しました。

一方、50代の男性Bさんは、突発的な耳痛とともに耳漏が続き、『慢性穿孔性中耳炎』と診断されました。Bさんには感染があるため抗菌薬治療が行われ、その後再発防止に向けた鼓膜閉鎖の手術が行われました。

症例主訴診断治療経過
Aさん (30代・女性)かゆみ→綿棒使用→黄白色の耳漏外耳炎外来での処置(洗浄や清掃)
Bさん (50代・男性)突発的な耳痛と耳漏慢性穿孔性中耳炎まずは抗菌薬で治療 その後鼓膜閉鎖手術

セルフチェック&ケア:自宅でできる初期対応と受診の目安

耳のかゆみを感じたら、まずは綿棒を使わずにぬるま湯で優しく外耳道を洗浄し、清潔なガーゼで軽く拭き取ってください。
市販の抗菌軟膏を薄く塗布するのも有効ですが、化膿性の耳漏が24時間以上続いたり、痛みや発熱を伴う場合、聴力低下を自覚した場合は速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

専門医が教えるQ&A

家でできる安全なケアは?

粉引きなど無理に掻かず、ぬるま湯洗浄と抗菌軟膏での保護を心がけましょう。

痛みが強いときは?

市販の鎮痛薬で一時的に緩和できますが、長引く痛みには医師の処方による適切な薬が必要です。

再発を防ぐには?

水泳後やシャワー後は耳の水分を優しく拭き、耳道の乾燥と保湿バランスを保つことがポイントです。

予防と再発防止:長期的な予防と習慣づくり

耳の健康を守るためには、綿棒を使わない耳掃除習慣を身につけること、1か月に1度程度の専門医での状態チェックを受けること、睡眠や栄養、ストレス管理を通じて全身の免疫力を高めることが重要です。季節の変わり目は気温や湿度の変化でトラブルが増えやすいため、特に注意してください。

さいごに:綿棒で耳をかき過ぎないのが重要です。

耳から液体が出るのは、体が発している「中で何かが起きている」というサインです。
確かにかゆみが出ると綿棒でかくのは気持ちがよいのも理解できるのですがかゆみが起こっている根本原因の解消につながるとは限らず、また一時的に収まったとしても、実は耳の症状はひそかに悪化していることもあります。

できるだけ早く耳鼻咽喉科で専門医の診察を受けましょう。

野田 昌生

この記事の監修

野田 昌生(のだ まさお)

  • 自治医科大学 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科 講師
  • 耳鼻科専門医 医学博士