プール後の「聞こえにくい」…まずは落ち着いて

夏のプールあそびは子どもたちにとって楽しいイベントですが、そのあとで「耳が聞こえにくい」「何度も聞き返してくる」といった変化に気づくことがあります。
こうした場合にまず考えられるのは、一時的に水が耳に詰まっているか、外耳炎(がいじえん)を起こしているケースです。
いずれもよくあることで、慌てず様子を見ながら判断していくことが大切です。

原因として考えられること

原因として考えられること

プールの水が耳に入ることで、耳の奥(外耳道)に水が残った状態が続くと、一時的に「耳がふさがった感じ」や「音がこもるような感覚」が出ることがあります。
これは自然に解消することがほとんどで、体を傾けたり、時間が経ったりすると改善する場合が多いです。

ただし、子どもの耳は大人に比べて構造が未発達であるため、水が抜けにくくなることもあります。
そうしたとき、残った水分が外耳の皮膚に刺激を与えたり、そこに細菌が増えることで、炎症=外耳炎が生じることがあります。
外耳炎になると、耳の痛み・発赤・腫れ・聞こえにくさ・ときに発熱などの症状が見られ、自然には治りにくくなることがあります。数日間症状が続くようであれば、早めに耳鼻科を受診しましょう。

実際にはこうしたケースも

耳鼻科外来では、夏になると「プールのあとに耳が聞こえにくい」「耳が痛い」といった子どもの受診がぐっと増えます。診察をしてみると、以下のようなパターンが多く見られます。

  • 単に耳の中に水が残っているだけで、処置なしでも自然回復するもの
  • 耳垢が水を吸って膨らみ、音の通り道をふさいでいたケース
  • 軽度〜中等度の外耳炎を起こしていたケース

ここまでであれば比較的軽症で済みますが、水が抜けたあとも聞こえの悪さが続いている場合は要注意です。実は、次のような疾患が原因になっていることもあります。

  • 中耳炎(中耳に膿がたまり、音がうまく伝わらない)
  • 鼓膜穿孔(こまくせんこう)(鼓膜に小さな穴が開いてしまった状態)
  • 稀に、鼻すすりや耳抜きがうまくできずに中耳内圧が変化し、滲出性中耳炎へ進行するケースもあります

とくに中耳炎は、必ずしも強い痛みを伴うとは限らず、「耳のこもった感じ」や「聞き返しが増える」などが初期のサインになることもあります。「あまり痛がらないから大丈夫かと思っていたら、中耳炎が悪化していた」という例は少なくありません。

こんなときは耳鼻科へ

こんなときは耳鼻科へ

以下のような様子が見られる場合は、早めに耳鼻科で診てもらうのが安心です。

  • 耳の聞こえにくさが1~2日以上続く
  • 耳を頻繁に触ったり、気にするそぶりがある
  • 発熱や耳だれ(液体が出る)が見られる
  • プール後以降、聞き返しが増えたりテレビの音を大きくしたがる

子どもの耳のトラブルは、早期発見と対応で悪化を防げることが多いです。

さいごに

子どもは「耳が変だ」とはっきり言えないことも多く、さりげない仕草や表情に異変が表れます。
まずはプールなどのイベントのあとには耳の様子を少し意識して観察してみること、そして、子どもが発する小さなサインを見逃さないことが大切です。

心配しすぎる必要はありませんが、「何かおかしいな」と思ったら、早めの相談が安心につながります。夏の楽しい思い出を耳トラブルで台無しにしないよう、ちょっとした気配りを心がけてあげましょう。

野田 昌生

この記事の監修

野田 昌生(のだ まさお)

  • 自治医科大学 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科 講師
  • 耳鼻科専門医 医学博士