「のどに何か流れてくる感じがする」「咳がなかなか治らない」…そんな症状が続いていませんか?
その原因、後鼻漏かもしれません。
命に関わる病気ではありませんが、本人にとっては非常につらく、日常生活に大きな影響を与えることもあります。

POINT
  • 咳が続く原因に後鼻漏の可能性あり
  • 漢方治療が後鼻漏の症状緩和に有効
  • 鼻うがいで日常ケアが可能

咳やのどの違和感の原因は気道ではなく鼻にあるかもしれません。
早期の診断と適切な治療で改善が期待できます。

後鼻漏の主な症状

後鼻漏の主な症状

後鼻漏の主な症状は、「鼻水がのどに流れる感じ」「痰がからむような咳」が代表的です。
風邪が治った後でも咳が長引く場合、それが後鼻漏によるものかもしれません。
特に、朝起きたときや横になったときに咳が出やすい、のどの奥に粘り気のあるものが常にあるように感じる、という方は要注意です。

また、咳だけでなく、鼻づまり、頭重感、咽頭痛などを併発するケースも多く報告されています。
さらに、「のどに何かが引っかかっている感じ」「詰まる感じ」が続くことで不安感を抱く方も少なくありません。

後鼻漏の原因・後鼻漏になり易い方

後鼻漏は、副鼻腔炎(特に慢性副鼻腔炎)が原因となることが多く、続いてアレルギー性鼻炎や急性鼻炎が関係します。特に冬季や花粉の季節に悪化する傾向があります。
乾燥環境、喫煙、職場の空気環境、鼻処置や手術の既往がある方は、粘膜機能が低下しやすく、後鼻漏のリスクが高くなります。

また、60歳以上の中高年層や10歳未満の小児にも多くみられるため、全年齢での注意が必要です。

後鼻漏の検査/診断方法

後鼻漏の検査/診断方法

診断には詳細な問診と視診が基本となり、鼻咽腔ファイバー(内視鏡)検査が最も使用されています。
検査により、鼻汁の性状や量、責任部位の特定が可能です。
また、画像検査(副鼻腔X線やCT)で副鼻腔の陰影や粘膜肥厚を確認します。

必要に応じてアレルギー検査や鼻汁細胞診を実施することもあります。
後鼻漏感のみで実際に鼻汁が確認できない場合でも、症状に応じて心因的要因を考慮することも大切です。

後鼻漏の治療方法・回復期間の目安

後鼻漏の治療には、原因疾患に応じた治療が必要です。
慢性副鼻腔炎が原因の場合は、カルボシステインなどの粘液調整薬が一般的に使用されており、市販薬としても利用可能です。

アレルギー性鼻炎には抗ヒスタミン薬や局所ステロイド薬が併用されることがあります。
また、小青竜湯や小半夏加茯苓湯などの漢方薬も症状に応じて有効とされています。
併せて鼻うがいによる物理的洗浄も効果的です。

症状が軽度であれば1~2週間、慢性化している場合は1ヶ月以上の治療が必要になることがあります。

類似症状の疾患

類似症状の疾患

後鼻漏と似た症状としては、咳喘息、逆流性食道炎、気管支炎、アレルギー性咽頭炎などがあります。
咳やのどの違和感が中心となるため、専門的な鑑別診断が必要です。

後鼻漏にならないための予防・日頃のケア

日常的には、鼻うがいの習慣化が有効です。
また、加湿器の使用や定期的な水分摂取、アレルギーのコントロール、禁煙なども予防に役立ちます。
冬季や花粉の時期には特に注意が必要です。
鼻閉を放置せず早めに対処することも重要です。

さいごに

後鼻漏にならないための予防・日頃のケア

後鼻漏は命に関わる病気ではありませんが、慢性的な咳やのどの不快感により、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。

症状が長引いている場合は、自己判断せず耳鼻科専門医による診察を受けてください。
あなたの症状に合った的確な治療で、快適な生活を取り戻しましょう。

野田 昌生

この記事の監修

野田 昌生(のだ まさお)

  • 自治医科大学 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科 講師
  • 耳鼻科専門医 医学博士