顔が動かしづらくなったり、口から水が漏れる、目がとじにくい…このような症状で気づくのが顔面神経麻痺です。
顔面神経麻痺は決して珍しい病気ではなく、日本では毎年4−5万人が発症すると報告されています。ストレスが原因と感じる方も多いですが、実際にはウイルスの再活性化が深く関与したものが多く、ストレスや疲労はその引き金になります。

「何科にかかればいいの?」と迷う方も多いですが、顔面神経麻痺の多くは耳鼻咽喉科で診断・治療を行います。一方で、まれに脳梗塞などの中枢性疾患が原因となることもあるため、自己判断せずに早期受診が大切です。

POINT
  • 顔の片側が動かないなどの症状が出たら早期受診が重要
  • 原因の多くはウイルスの再活性化で、ストレスや疲労も引き金に
  • 何科に行く?迷ったら耳鼻科が専門対応可能

顔面神経麻痺は早期診断と治療が回復のカギです。
この記事では具体的な症状や原因、治療方法について詳しくご説明します。

顔面神経麻痺の主な症状

顔面神経麻痺の主な症状

顔面神経麻痺は、突然顔が動かしづらくなる病気です。具体的には以下のような症状が現れます。

  • 顔の片側が動かない(表情が作れない)
  • 目が閉じられない(兎眼)
  • 口角が下がる、口から水が漏れる
  • 額にシワが寄せられない
  • 舌の前方3分の2の味覚異常
  • 耳鳴りや聴覚過敏(音が響いて聞こえる)

顔面神経が司る機能は顔を動かす表情筋だけでなく、聴覚や味覚、涙や唾液の分泌にも関係しています。そのため「顔の麻痺」に加え、感覚や分泌の異常も見られるのが特徴です。

顔面神経麻痺の原因・顔面神経麻痺になり易い方

顔面神経麻痺の主な原因は、単純ヘルペスウイルスや帯状疱疹ウイルスの再活性化です。これらは強いストレスや過労、寒暖差などによる免疫低下をきっかけに体内に潜伏したウイルスが再活性化し、顔面神経に炎症を引き起こします。
「ベル麻痺」は末梢性顔面神経麻痺の過半数を占め、比較的予後が良好です。
一方、「ラムゼー・ハント症候群」は耳痛や発疹、めまい・難聴を伴いやすく、後遺症が残るケースもあります。
なりやすい方の特徴としては、以下のような傾向があります。

  • 風邪を引いた後や疲労がたまっている方
  • 40代〜60代の働き盛りの年代
  • 季節の変わり目や寒暖差がある時期

顔面神経麻痺の検査/診断方法

顔面神経麻痺の検査/診断方法

顔面神経麻痺の診断は主に問診と診察が基本です。顔の動きから程度を評価(柳原法)するだけでなく、前頭筋(額)にシワを寄せられるかで中枢性か末梢性かを判別し、耳下部の触診や耳内の観察も行います。また、味覚や聴力の評価も行います。
さらに、以下のような検査が必要に応じて行われます。

  • ENoG(Electroneurography)検査:発症後10日目以降に行い、神経の損傷度を評価。
  • 神経興奮性検査(NET):神経の興奮閾値を左右で比較。
  • 柳原法(40点法):表情筋の動きを10項目で採点し、麻痺の重症度を数値化。

CTやMRIによる画像診断は、中枢性麻痺や腫瘍の除外診断に使用されます。
耳鼻科ではこれらの検査を組み合わせ、迅速かつ的確に診断を行います。

顔面神経麻痺の治療方法・回復期間の目安

治療は発症後72時間以内にステロイド薬を開始することが最も重要です。
重症例やハント症候群では、抗ウイルス薬との併用が推奨されます。

  • 軽症(柳原スコア20点以上):自然治癒の可能性もある。
  • 中等症(18〜10点):通常、ステロイド内服治療を行い、回復まで1〜2ヶ月。
  • 重症(10点未満):ステロイド点滴や原因によって抗ウイルス薬の併用。3ヶ月以上かかることもあり、完全に戻らない場合もある。

また、ステロイドの鼓室内投与や顔面神経減荷術(神経の圧迫を解除する手術)も重症例では耳鼻科で対応されることがあります。
また、薬物療法だけでなく、リハビリテーションも非常に重要です。

類似症状の疾患

本稿で述べたベル麻痺やラムゼー・ハント症候群と似た症状のある疾患としては、

などがあり、正確な診断が重要です。

顔面神経麻痺にならないための予防・日頃のケア

顔面神経麻痺にならないための予防・日頃のケア
  • ワクチン(帯状疱疹ワクチン)接種の検討(50歳以上)
  • 十分な睡眠と栄養、過労の回避
  • 強いストレスを感じたら早めにリフレッシュ
  • 風邪を引いた後は無理をしない
  • 寒さや冷えから顔を守る(マスクやスカーフなど)

特に「ストレス」「免疫力の低下」は発症のトリガーになるため、日々の生活習慣を見直すことが重要です。

さいごに

顔面神経麻痺は早期治療で予後が大きく改善します。一方で治療開始が遅れると、後遺症が残ることもあります。

また、発症して「何科に行くべきか?」と迷う方が多いですが、顔面神経の解剖や疾患に精通した耳鼻咽喉科の受診が非常に有効です。正しい診断と治療、リハビリを通じて、多くの方が元の生活に戻っていますので、顔の異変に気づいたら、早めの受診をお勧めします。

野田 昌生

この記事の監修

野田 昌生(のだ まさお)

  • 自治医科大学 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科 講師
  • 耳鼻科専門医 医学博士