「鼻の中がかゆい」は、乾燥・アレルギー・鼻毛処理など複数要因が重なるサイン。
放置や“いじり過ぎ”で悪化しやすく、正しい見極めとケアが大切です。この記事で要点をまとめます。

POINT
  • 鼻の中がかゆい時はこすらない
  • 鼻水が多い日は保湿+やさしくかむ
  • 鼻毛は抜かずに安全にカット

かゆみは「乾燥」「アレルギー」「物理刺激」の複合が定番。
まず刺激を減らし、必要に応じて耳鼻科で原因を見極めると、最短で改善につながります。

主な症状

主な症状
  • 鼻の中がかゆい/ヒリヒリする
  • 透明~水様性の鼻水が何度も出る(くしゃみ3~5連発も)
  • 強くかむと鼻の入口が切れて少量の出血やかさぶた
  • 乾燥した室内、就寝前や起床直後に悪化
  • 温度差や刺激臭で症状が誘発
  • 花粉期や掃除直後に増悪、鼻づまり・頭重感で睡眠の質が落ちる

疾患の原因・病気になり易い方

主因は
①アレルギー性鼻炎
②乾燥(ドライノーズ)
③鼻前庭炎(鼻入口の炎症:鼻毛を抜く・強くかむ・いじる癖などの物理刺激)
④血管運動性鼻炎(寒暖差・自律神経の乱れ)

に大別。

花粉期やダニ・ハウスダスト環境では水様性の鼻水・かゆみが目立ち、通年性では下鼻甲介の蒼白腫脹が典型像です。
一方、感染症では鼻水が粘稠~粘膿性になりやすく、全身倦怠感や発熱を伴うことがあります。
冬季の低湿度・エアコン暖房、粉じん環境、マスク下の乾燥、睡眠不足やストレスは悪化因子。
アレルギー家族歴、小児、アトピー素因のある方は発症しやすい傾向です。

検査/診断の方法

検査/診断の方法

耳鼻科では、問診→視診(鼻鏡/内視鏡)→必要に応じた検査を段階的に行い総合判定します。
鼻鏡では色調・腫脹・鼻水の性状を確認し、アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎・鼻中隔弯曲症・鼻茸などを鑑別します。
通年性アレルギーでは下鼻甲介が蒼白で浮腫性、季節性では発赤・腫脹が目立ちます。

代表的検査

  • 鼻汁好酸球検査:綿棒採取→塗抹→ハンゼル染色。100倍“散在性”で(+)ならアレルギー性が疑われます。ただし発症直後は陰性になり得ます。
  • 皮膚テスト(スクラッチ/プリック/皮内):その場で結果を視認、結果判明は約20分。抗ヒスタミン薬は事前休薬が必要です。
  • 血清特異的IgE:採血で実施し、結果は数日後。迅速法なら約30分のキットも。単独では過剰診断のリスクがあるため、問診や他検査と合わせて総合判断します。
  • 画像:副鼻腔X線/CTは合併症評価に用いますが、陰影の型だけでは感染かアレルギーか判断は困難です。

最終的には、典型症状+所見に加え、鼻汁好酸球・皮膚テスト・特異的IgE・誘発のうち複数陽性で診断します。

治療の方法・回復期間の目安

原因別に併用します。

  • 乾燥(ドライノーズ):加湿(室内50~60%)、生理食塩水スプレー、白色ワセリン薄塗り。数日~1週間で軽快。
  • アレルギー性鼻炎:第2世代抗ヒスタミン薬、点鼻ステロイド、抗ロイコトリエン等。多くは48~72時間で自覚改善。中等症以上や季節性では併用を検討。舌下免疫療法(スギ/ダニ)は1~3か月で実感、推奨継続3年以上(根本治療)。
  • 鼻前庭炎:鼻毛は“抜かず”に先端のみカット。いじらない・強くかまない。必要に応じ外用薬を短期で。軽症は3~7日で改善。
  • 感染が疑わしい膿性の鼻水・発熱があれば、抗菌薬含め医師の評価を。
  • 難治の鼻づまりには下甲介レーザー等の外科的治療も選択肢(外来短時間・効果は半年~2年目安)。

※アレルギーと感染では鼻水の性状(“水様性”か“粘膿性”か)が目安になります。

類似症状の疾患

類似症状の疾患

急性鼻炎・急性/慢性副鼻腔炎(粘膿性鼻水、頬部痛・発熱、1~2週間の経過)、鼻茸、接触皮膚炎、アレルギー性結膜炎(目のかゆみ強い)など。膿性の鼻水や発熱、片側の出血が続く場合は早期受診を。

予防・日頃のケア

  • 室内湿度50~60%、就寝前は加湿+コップ1杯の水
  • 生理食塩水スプレー→白色ワセリンを綿棒で薄く(鼻の中の保湿)
  • 鼻毛は「抜かずに」ハサミで目立つ部分だけをカット(鼻毛は異物フィルター)
  • 鼻水は片側ずつやさしく。連続で強くかまない(鼻前庭炎予防)
  • 花粉・埃対策:マスク・眼鏡、帰宅後は洗顔/着替え。鼻うがいは1日2回以内、生理食塩水で
  • 布団・カバーのダニ対策(洗濯・乾燥・布団乾燥機)
  • 急な温度差を避ける(外出時はマスクで鼻口を保温)

さいごに

鼻のかゆみは「鼻の中がかゆい」「鼻水」「鼻毛処理」の三要素が絡みやすく、自己流でいじるほど長引きます。
症状と鼻水の性状、季節性を手掛かりにしつつ、検査は当日判定できるもの(皮膚テスト約20分)から数日で結果の出る採血まで揃っています。
2週間以上続く、膿性の鼻水・発熱・片側出血がある、鼻づまりが強い場合は耳鼻科で原因を特定しましょう。適切な治療で多くは短期間で改善します。

野田 昌生

この記事の監修

野田 昌生(のだ まさお)

  • 自治医科大学 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科 講師
  • 耳鼻科専門医 医学博士