インフルエンザや風邪のシーズンになると、「マスクは本当に予防になるの?」「してても風邪ひいた」という声を耳にします。
実際、マスクの効果については様々な意見があり、使い方や選び方によって効果に差が出るのも事実です

この記事では、最新の文献や研究結果に基づき、「マスクの効果」や「うつる・防げる」の誤解を解消し、正しい活用法をわかりやすく解説します。

POINT
  • 不織布マスクはインフルエンザの飛沫感染予防に高い効果
  • マスクの効果は「密着性」と「保湿作用」でさらに高まる
  • 就寝時の装着で咳や痰の症状緩和に有意差あり

マスクの効果が発揮される仕組みとは?

マスクの効果が発揮される仕組みとは?

マスクがインフルエンザや風邪に効果を発揮する仕組みは、主に以下の3つの要素から成り立っています。

飛沫の遮断

インフルエンザウイルスは咳やくしゃみで飛ぶ「飛沫(5μm以上)」に含まれます。不織布マスクはこの飛沫を物理的に遮断し、周囲への拡散や自身への侵入を防ぎます。医療用マスク(サージカル/N95)はさらに高性能で、0.3μmの微粒子を95%以上捕集できることが確認されています。

接触感染の抑制

マスクをしていれば、無意識に鼻や口に触れる頻度が下がります。これは、手に付着したウイルスが粘膜から侵入するのを防ぐ間接的な効果です。

口腔・咽頭の保湿と温度保持

最新の研究では、マスクの「保湿効果」によって咽頭の乾燥を防ぎ、免疫バリアを維持できることがわかっています。特に就寝時のマスク着用は、口呼吸による咽頭乾燥を防ぎ、粘膜の防御機能を高める効果があるとされます。実際、マスクを就寝時に着用したグループは、咳や痰の症状が有意に早く軽快しました。

この保温・保湿作用が、上気道の粘膜免疫や扁桃組織を活性化させ、ウイルスの下気道への侵入を食い止めている可能性があると指摘されています。

「マスクしててもうつる」の誤解と現実

「マスクしててもうつる」の誤解と現実

「マスクをしていたのにインフルエンザにかかった」というケースには、次のような要因が考えられます。

  • 鼻出し・顎マスクなどの誤装着
  • 湿ったマスクを長時間使用し続ける
  • マスクの外側を頻繁に触ってしまう
  • 手洗いや換気など他の予防策を怠る

つまり、マスクは“正しく使ってこそ効果がある”ということです。特に密着性が不十分なマスクでは、顔とマスクの間にすき間ができ、ウイルスの侵入を許してしまいます。

また、布やウレタン製のマスクでは、飛沫の遮断率が低いとする報告もあり、特に感染拡大期には不織布マスクが推奨されます。

マスク以外に重要な感染対策

マスクはあくまで予防策の一つ。感染対策として以下の項目も併せて行うことが重要です。

  • 石けんを使ったこまめな手洗い
  • 人混みや換気の悪い場所を避ける
  • 定期的な換気(1〜2時間おき)
  • インフルエンザワクチンの接種

また、症状が出た際には、早めに医療機関を受診し、他人への感染拡大を防ぐ意識も重要です。

まとめ:マスクは“予防”と“緩和”の二刀流

マスクには、インフルエンザウイルスなどの飛沫を防ぐ「感染予防」の役割と、咽頭の保温・保湿により粘膜の免疫機能を維持し「症状の緩和」を助ける作用があります。特に就寝時の着用は、咳や痰の軽減に有効であり、風邪症状の改善を早める可能性があるとする研究もあります。

感染対策を“マスクだけ”に頼らず、正しい使い方と他の予防手段を組み合わせて、インフルエンザや風邪のリスクをしっかりと減らしましょう。

野田 昌生

この記事の監修

野田 昌生(のだ まさお)

  • 自治医科大学 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科 講師
  • 耳鼻科専門医 医学博士