「朝起きたら急に片耳が聞こえにくい」「耳鳴りが急に強くなった」「耳が詰まった感じがして聞こえない」――そんな症状が急に出たとき、突発性難聴の可能性があります。

突発性難聴は、一般に72時間以内に急に起こる感音難聴で、耳鼻咽喉科では急いで対応が必要な病気のひとつとして扱われます。多くは原因がはっきりしないため「突発性」と呼ばれますが、最近の総説でも、炎症、ウイルス、血流障害、自己免疫など複数の要因が考えられている一方、なお不明な部分が多いと整理されています。

この記事では、突発性難聴とは何か、なぜ急ぐ必要があるのか、今の標準治療は何か、そしてステロイド以外の治療はどこまであるのかを、一般の方にわかりやすくまとめます。あわせて、治る可能性や予後に関わる要素も整理します。

POINT
  • 突発性難聴は、急に起こる感音難聴で、できるだけ早い受診が重要です。
  • 現在の標準治療の中心はステロイド治療です。
  • ステロイド以外では、鼓室内ステロイド注入高気圧酸素療法が追加治療として議論されますが、ほかの治療はまだ十分な根拠がそろっていないものもあります。

突発性難聴とは

突発性難聴は、一般に72時間以内に30dB以上、3つ以上の連続した周波数で生じる感音難聴を指します。片耳に起こることが多く、耳鳴り、耳閉感、めまいを伴うこともあります。原因が特定できるケースは多くなく、臨床的には「原因不明の急性感音難聴」として扱われることが一般的です。

よくある症状

症状具体例
聞こえにくさ片耳だけ急に聞こえにくい、テレビの音が偏る
耳鳴りキーン、ジーという音が急に出る
耳閉感耳が詰まった感じ、膜が張った感じ
めまい回転性めまい、ふらつきを伴うことがある

「耳あかが詰まっただけかな」「疲れかな」と思って様子を見ると、受診が遅れることがあります。急な片耳難聴は、まず耳鼻咽喉科で確認することが大切です。

なぜ急ぐ必要があるのか

なぜ急ぐ必要があるのか

突発性難聴は、治療開始が遅れるほど回復しにくくなる可能性があるため、早く受診したほうがよい病気と考えられています。最近のレビューでも、発症から早い段階で治療介入することが重要とされ、特にステロイド治療は早期開始が基本と整理されています。

また、急な難聴の中には、突発性難聴以外にも、聴神経腫瘍や自己免疫疾患、脳血管イベントなど、除外すべき病気が隠れていることもあります。耳鏡検査、聴力検査、必要に応じた画像検査などで原因を見分けていくことが重要です。

標準治療は何か

現在の標準治療の中心は、ステロイド治療です。
ステロイドは内耳の炎症や浮腫を抑えることを期待して使われ、全身投与(内服または点滴)が基本になります。2024年の総説でも、ステロイドは今も第一選択として扱われています。

一方で、最初から全員に同じ治療が行われるわけではありません。年齢、難聴の程度、めまいの有無、持病、受診時期などを踏まえて、全身ステロイド、鼓室内ステロイド注入、追加治療を組み合わせることがあります。

ステロイド以外の治療はある?

あります。
ただし、「ステロイド以外が標準」と言えるほど確立しているものは多くない、というのが現在の整理です。2025年の非ステロイド治療レビューでも、複数の治療法が検討されている一方、エビデンスの強さには差があるとまとめられています。

鼓室内ステロイド注入

これは厳密には「ステロイド以外」ではありませんが、全身投与とは別の方法として重要です。鼓膜から中耳にステロイドを入れて、内耳に近いところから薬を届ける治療で、救済治療として使われることが多いです。全身ステロイドが使いにくい人や、最初の治療で十分に改善しない人で検討されます。

高気圧酸素療法

近年、追加治療としてよく話題になるのが高気圧酸素療法(HBOT)です。2024年のアンブレラレビューでは、HBOTは一定の有効性が示唆されており、特に一部の重症例や追加治療としての位置づけが議論されています。ただし、すべての患者さんに行う治療として一律に勧められるわけではなく、施設、費用、タイミング、適応の見極めが必要です。

そのほかの治療

血流改善薬、抗酸化薬、抗ウイルス薬、N-アセチルシステイン、プロスタグランジン、線溶系に関わる治療など、さまざまな追加治療が研究されてきました。
ただし、2025年のレビューでは、これらは有望性が示されるものはある一方、十分に確立した標準治療とは言いにくいと整理されています。一般向けには、「研究中・議論中の治療もあるが、主役は今もステロイド」と理解するのが自然です。

治療法を表で整理

治療今の位置づけどんな場面で考えるか注意点
全身ステロイド標準治療の中心まず最初に検討されることが多い早期開始が重要。糖尿病などでは注意が必要
鼓室内ステロイド注入追加治療・救済治療全身ステロイドが使いにくい、または反応が不十分なとき処置が必要
高気圧酸素療法追加治療として検討重症例や追加治療として議論される実施施設が限られる。適応判断が必要
そのほかの非ステロイド治療研究段階・議論あり症例により検討されることはある標準治療としては位置づけが弱いものも多い

この表のポイントは、「ステロイドが今も治療の軸」であることと、追加治療は症例ごとに考えるという点です。

予後に関わる要素

突発性難聴は、一定割合で改善がみられる一方、回復が十分でないケースもあります。最近のレビューや予後因子研究では、次のような要素が回復と関係しやすいとされています。

予後に関わりやすい要素

要素一般的な傾向
初診時の難聴の重さ重いほど回復しにくい傾向
めまいの有無めまいを伴うと予後不良のことがある
受診・治療開始までの時間遅いほど不利になりやすい
年齢高齢では回復しにくい傾向を示す報告がある
聴力型周波数ごとの障害パターンで差が出ることがある

2024年の予後因子レビューでは、重症難聴、めまい、治療開始の遅れが重要なポイントとして挙げられています。2025年の重症例解析でも、初期の難聴の重さとめまいは予後不良と関連すると報告されています。

ただし、予後は個人差が大きく、必ずしも一つの要素だけで決まるわけではありません。早く受診して、できるだけ適切な初期対応につなげることが大切です。

こんなときはすぐ受診

こんなときはすぐ受診

次のような症状があれば、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。

「そのうち治るかも」と数日様子を見ることが、治療開始の遅れにつながることがあります。突発性難聴は、早く診断して治療方針を決めること自体に意味がある病気です。

さいごに

突発性難聴は、耳鼻咽喉科で急いで対応が必要な病気のひとつです。
現在の標準治療の中心はステロイドで、これに加えて鼓室内ステロイド注入や高気圧酸素療法が追加治療として検討されることがあります。一方で、ステロイド以外の治療は、まだ十分な根拠がそろっていないものも少なくありません。

大切なのは、「治るかどうか」を家で考え続けることではなく、急に聞こえが悪くなったら早く耳鼻咽喉科を受診することです。早期対応が、その後の回復の可能性につながります。

参考文献

  • Lee HA, et al. Contemporary Review of Idiopathic Sudden Sensorineural Hearing Loss: Management and Prognosis. 2024.
  • Rodríguez-Izquierdo C, et al. Current Role of the Nonsteroid Treatment of Idiopathic Sudden Sensorineural Hearing Loss. 2025.
  • Liu X, et al. Efficacy of Hyperbaric Oxygen Therapy in Treating Sudden Sensorineural Hearing Loss: Umbrella Review. 2024.
  • Caragli V, et al. Prognostic Factors in Idiopathic Sudden Sensorineural Hearing Loss. 2024.
  • Chen L, et al. Analysis of the Reasons for Poor Prognosis in Severe to Profound SSNHL. 2025
野田 昌生

この記事の監修

野田 昌生(のだ まさお)

  • 自治医科大学 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科 講師
  • 耳鼻科専門医 医学博士