概要
若年性血管線維腫(じゃくねんせいけっかんせんいしゅ、juvenile angiofibroma )は、主に若い男の人に多く、鼻や咽頭に発生する血行の豊富な良性腫瘍です。
頻度は稀ですが、この腫瘍はしばしば大きく成長して、周囲の組織や構造に広がることがあり、出血する可能性もあるため、注意して見ていく必要のある疾患といえます。
原因や病態について
若年性血管線維腫の正確な原因はまだはっきりしていませんが、胎生期の組織が残ったり、血管の破綻によって発生し、遺伝的要素やホルモン(特にアンドロゲン)、環境要素が関与すると考えられています。
成長因子や増殖因子の影響によって、腫瘍は血管と繊維組織の過剰な成長から形成された結果、症状として、鼻出血や鼻閉、顔面腫脹などの症状が現れます
必要な検査とその所見について
若年性血管線維腫の診断は主に病歴、診察、鼻内視鏡検査、および画像診断(CTスキャンやMRIなど)に基づいて行われます。腫瘍は表面がツルツルとした赤色の腫瘍であることが多く、繰り返す出血や片側だけの鼻閉などがあればこれを疑います。
画像検査では、腫瘍の位置、大きさ、周囲への広がりなどを評価します。診断の確定は、組織の一部をとって、顕微鏡で観察することで行いますが、大量出血する場合があり、画像による事前の血流評価が重要です。
鑑別疾患について
若年性血管線維腫は、症状のみでは鼻炎や副鼻腔炎、鼻出血としてしまうことや、他の腫瘍と混同されることがあります。
例えば、血管腫、血管腫(血管奇形)、血瘤腫、上咽頭腫瘍、後鼻孔ポリープ、などとの鑑別が必要になります。
治療方法について
主な治療方法は外科手術で、腫瘍を可能な限り完全に除去することが目指されます。内視鏡での手術を行うことが多いですが、腫瘍が大きく、頭蓋底や他の重要な構造に広がる場合には、手術が困難になったり、顔の外側から皮膚を切って手術を行うこともあります。
血流が多いため、大きさや位置によっては、術前の血管塞栓療法で腫瘍の血供給を遮断し、手術を安全に行うことができる場合もあります。
その他の治療法としては、放射線療法が行われる場合もあります。
- 若年性血管線維腫は鼻や咽頭に発生する血行の豊富な良性腫瘍の一つ
- 若い男性に多く、鼻出血や片側の鼻つまり、顔の腫れなどが主な症状
- 画像検査が有効で、組織をとる際には事前に血流の評価も必要となる
- 増大し、周りの組織へ進展することもあるため、手術や血管の塞栓が適応となる場合がある