生まれてすぐの新生児期には、早期に異常を発見するために、先天性代謝異常の検査や聴覚検査によるスクリーニングが行われます。
先天性難聴は1000人に1−2人とされており、欧米では聴覚検査の実施を義務付けている国もあります。日本では聴覚スクリーニングが普及していますが、地域によっても普及の程度は異なっており、まだ完全とは言えない状況です。

国内の新生児聴覚スクリーニングでは、年間に4000人程度が全国の精密聴力検査施設を受診しており、そのうち1000人程度で両側の難聴が発見されています。両耳が聞こえにくい場合には、早期発見・早期診断・早期介入が聞く力や話す力を養い、言葉を獲得していく上で非常に重要となります。

スクリーニングってどんな検査をするの?

新生児スクリーニングは、生後数日から2週間以内の新生児に行われる検査で、先天性代謝異常や免疫不全症候群など、早期に発見しなければならない疾患を早期発見することを目的としています。
新生児聴覚スクリーニングはその中でも、聴力についてのスクリーニング検査です。内耳の反応をみる検査(OAE)と、音に対する反応をみる検査(自動聴性脳幹反応検査(AABR))があります。
ABRは、赤ちゃんの頭皮に電極を装着し、耳に小さな音を流した際の、脳の反応を測定します。
OAEは、耳に小さな音を流して、その音によって発生する耳の反応を測定する方法です。

どちらの方法でも、テストは簡単で非侵襲的であり、赤ちゃんに不快感を与えることはありません。聴覚スクリーニングは、早期に聴覚障害を発見することで、適切な治療や支援を提供し、赤ちゃんの成長と発達に適切に対応することができます。
これらのスクリーニングによって、「パス(pass)」あるいは「リファー(要再検、refer)」と評価しています。

リファー(要再検)となった場合には、再検査や専門家の診察が必要とされる状態ということになり、耳鼻咽喉科精密検査機関を受診し、適切な検査を行うことで、

  • 本当に聴力が悪いのか
  • どれくらい悪いのか
  • 何が原因なのか
  • 治療介入が必要なのか

などについてみていく必要があります。日本小児耳鼻咽喉科学会の新生児聴覚検査の流れでは

  • おおむね生後3日以内に初回検査
  • 要再検となった場合には生後1週間以内に確認検査
  • それでも再検となった場合には生後3ヶ月以内に耳鼻咽喉科精密機関での精密検査
  • 早期療育が必要な場合には、遅くとも生後6ヶ月までに開始

を推奨しています。

検査の流れについては、概要や目安ではありますが、言葉を獲得する臨界期を考えると、早期に介入することがそれ以降のコミュニケーションや学習の上で必要となるのです。

気になることがありましたら、耳鼻咽喉科専門医や専門機関でご相談することをお勧めします。

POINT
  • 新生児聴覚スクリーニングは、生まれてすぐのスクリーング検査の一つで聴力に関しての検査のこと
  • 内耳の反応をみるOAEと音に対する反応をみるABRがあり、リファー(要再検)となった場合には耳鼻咽喉科精密検査機関を受診し、再検査や専門家の診察が必要
  • 両耳難聴では特に、早期発見・早期診断・早期介入が非常に重要
野田 昌生

この記事の監修

野田 昌生

  • 自治医科大学 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科 講師
  • 耳鼻科専門医 医学博士