気管切開術は、息の通り道である気管を切開することで、気道の確保や痰の排出ルートの確保などの気道の管理を容易にするために行います。

気道の確保では、息の通り道が狭くなっている状態(喉が腫れている場合や外傷など)に対して行うことが多く、気道の管理では、唾や痰など分泌物を誤嚥して肺炎などのリスクを低下させる場合や、長期的に気管挿管(口や鼻から気管に長い管をいれる)を行う際に行われます。

手術の方法

小児において、基本的に手術は全身麻酔で行い、手術時間の目安は約1時間程度です。一般的に、手術の主な流れとしては以下の通りです。

  1. 頸部に1-2cmの皮膚切開をおき、皮下組織をわけて気管を露出させます
  2. 気管壁に1cm程度の窓をあけます
  3. カニューレという呼吸のための短いチューブを挿入します

症例によっては、皮膚や気管を切開する部位を変えることがあります。

合併症

この手術で起こりうる合併症として、手術をしてすぐにおきるものと、時間が経ってからおきるものがあります。

術直後の合併症

手術をしてからすぐにおきるものとしては、以下のものがあります。

  • 気道狭窄や出血による窒息(術中死亡の可能性) →術中は酸素化をモニタリングし、適宜吸引を行います
  • 術後肺炎、創部感染 →抗菌薬を投与します
  • 発声困難(必発) →術後の経過によって、発声可能なカニューレへ交換します
  • 疼痛 →鎮痛薬を投与します
  • 反回神経麻痺 →声のかすれが残存する可能性があります
  • 皮下気腫、縦郭気腫 →感染を起こさない場合は経時的に改善を図ります
  • 麻酔による合併症(肝腎機能障害、肺炎、肺塞栓、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、アレルギー、ショックなど)
    →予期せぬ出来事(致命的な合併症)が生じた場合は、その治療に専念し、手術を中断することもあります。

術後晩期の合併症

  • カニューレ抜去困難症
  • 気管腕頭動脈瘻による出血
  • カニューレの脱落や閉塞による窒息

合併症に対しては、起こらないように十分注意をはらうとともに、発症した場合も最大限の治療を行います。

代替治療について

代わりの方法として、長期的に口から長いチューブを入れる気管挿管がありますが、喀痰排出などの気道管理やチューブ交換時の再挿管困難のリスクがあります。

手術を承諾されるかどうかは、患者さんやそのご家族の意思が尊重されます。承諾されない場合でも、診療上の不利益をうけることはありません。この手術・治療法に関してご不明な点がありましたら、耳鼻科専門医にご相談してください。

野田 昌生

この記事の監修

野田 昌生

  • 自治医科大学 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科 講師
  • 耳鼻科専門医 医学博士