鼓膜チューブ挿入術は、その名の通り、鼓膜にチューブを入れることで、「鼓室内の換気を改善し、中耳炎の再発を予防すること」を目的としています。
主に対象となる疾患は、
- 滲出性中耳炎
- 急性中耳炎
があります。
手術方法
施設によって基準が異なり、全身麻酔で行うところもあれば、局所麻酔で行う場合もあります。
一般的には、手術時間は30分程度ですが、個人差があります。手術の手順としてはシンプルで
- 鼓膜を専用のメスで切開し、鼓室内の貯留液を除去
- 鼓膜を切開した部位にシリコン製のチューブを挿入
することで終了とします。
合併症
合併症としては、耳の中を触る際に、他の構造を傷つけてしまう可能性があり、以下のものが挙げられます。
- 出血(高位静脈球の損傷による大量出血を含む)
- 外耳道損傷
- 耳小骨離断
多くは問題なく終了します。その他に、以下の点が考えられます。
- 鼓室内異物(チューブが鼓室内へ脱落してしまう)
- 鼓膜穿孔の残存(チューブが抜けた後も穴がのこる)
術後に関して
- チューブ留置後は、鼓膜やチューブの状態、聴力の評価などで通院していただくことが多いです。施設により基準が異なりますが、当院では術後1ヶ月程度で観察しています。
- チューブが体(耳)にあわず、異物反応として術後に耳漏が出たり、肉芽できたりすることや、入れたチューブがすぐに抜けてしまったり、あるいは抜かなければならないことがあります。
- 一般的には、チューブ留置中は、お風呂や顔に水がかかる程度の水遊びは可能です。汚れた水に潜る際には耳栓をしていただいています。また、耳漏がでたり、耳の聞こえの状態が悪い場合は、水泳など避けた方がよいでしょう。
- チューブが抜けたあと(ほとんどの場合は自然に脱落します)に、滲出性中耳炎の再発がある場合、再びチューブ留置の手術が必要となることがあります
- チューブが抜けたあとの鼓膜穿孔は、ほとんどの場合は自然にふさがります。しかし、穿孔が残る場合には、時期をみて鼓膜の穴を閉鎖する手術(鼓膜形成術、鼓室形成術)が必要となることがあります。
代替治療について
対象となる疾患によって異なりますが、内服による治療や鼓膜切開(鼓膜を切るのみでチューブは入れない)ことがあります。すでに内服加療を行った上で改善がない場合などには、鼓膜チューブ挿入術が必要となることが多いです。
治療に関しては、メリットとデメリットの両者を考えて選択する必要があります。
手術を承諾されるかどうかは、患者さんの意思が尊重されます。承諾されない場合でも、診療上の不利益をうけることはありません。まずは、専門医にご相談ください。