「子どものいびきが大きい」「寝ている間に呼吸が止まる気がする」――そんなときに検討されることがあるのが、アデノイド切除術や扁桃の手術です。小児の閉塞性睡眠時無呼吸では、アデノイドや口蓋扁桃の肥大が大きく関わることが多く、手術が有効な場合があります。
最近では、従来よりも術後の痛みや出血を抑えやすい工夫を取り入れた術式も広がっており、そのひとつが被膜を残して扁桃をとるPITAです。この記事では、アデノイド切除術と扁桃腺の手術、PITAの違い、どんな症状で手術が検討されるのか、注意点も含めてわかりやすく解説します。
- アデノイド切除は鼻の奥(上咽頭)、扁桃の手術はのどの左右の口蓋扁桃が主な対象
- PITAは、主に小児OSAで用いられる被膜内扁桃切除+アデノイド切除を含む低侵襲な術式で、従来法より術後の痛みや出血が少ない傾向がある
- いびきや睡眠時無呼吸の原因がアデノイド・扁桃肥大にある場合、手術で改善が期待できる
そもそもアデノイド・扁桃腺とは?
アデノイドは、鼻の奥の上咽頭にあるリンパ組織です。小さいうちは感染防御に関わりますが、肥大すると鼻づまり、いびき、口呼吸、中耳炎の原因になることがあります。
口蓋扁桃は、のどの左右にあるリンパ組織で、こちらも大きくなると気道が狭くなり、いびきや睡眠時無呼吸に関与します。
手術をすすめられる症状

こんな症状があるとき、手術が検討されます。
- 大きないびきや、呼吸が止まる
- 大きないびきが続く
- 寝ている間に呼吸が止まる、息苦しそうに見える
- 寝てもすっきりせず、日中の眠気や集中力低下がある
- 口呼吸が続く
- 中耳炎や副鼻腔炎をくり返す
- 飲み込みづらさや食べにくさがある
小児の睡眠時無呼吸では、症状に加えてアデノイドや扁桃の肥大があり、睡眠中の呼吸障害が確認されれば手術適応が検討されます。
診断の標準は睡眠ポリグラフ検査ですが、実際には問診、診察、簡易検査、家庭での睡眠の様子などを組み合わせて判断されることもあります。
アデノイド切除術とPITAの違いは?

アデノイド切除術とPITAは、どちらも気道を広げて呼吸を改善する目的がありますが、対象部位と術式の考え方が異なります。
PITAは一般に、Powered Intracapsular Tonsillectomy and Adenoidectomyの略で、パワーデバイスを用いた被膜内扁桃切除とアデノイド切除を組み合わせた術式として使われています。
| 比較項目 | アデノイド切除術 | PITA |
| 主な対象部位 | 鼻の奥(上咽頭)のアデノイド | 口蓋扁桃+アデノイド |
| 主な対象 | 主に小児 | 主に小児OSA |
| 期待される効果 | 鼻づまり、いびき、中耳炎の改善 | いびき、睡眠時無呼吸の改善 |
| 術後の痛み | 比較的少ない | 従来の扁桃全摘より少ない傾向 |
| 術後出血 | 比較的少ない | 従来の扁桃全摘より少ない傾向 (0.5%未満) |
| 注意点 | 残存や再増大の可能性 | 一部組織を残すため再増殖の可能性 |
従来の口蓋扁桃摘出術では術後出血が3~5%、アデノイド切除術では約0.3%と報告されています。PITAは、従来法に比べて術後の疼痛や出血を抑えやすい術式として導入が進んでいます。

手術の流れと入院・回復期間の目安
アデノイド切除術
アデノイド切除術は全身麻酔で行い、内視鏡やマイクロデブリッダーなどを使って切除します。比較的短時間で行われることが多く、出血も少ない手術です。
- 全身麻酔下で、内視鏡やマイクロデブリッダーを使い、正確に切除
- 出血も少なく、10分以内で終了することも
- 1〜3日で退院可
PITA(被膜内口蓋扁桃切除術)
全身麻酔で行い、扁桃の被膜を一部温存しながら切除します。筋層の露出を避けやすいため、従来の扁桃全摘術より痛みや出血を抑えやすいとされています。
- 全身麻酔で、扁桃の被膜内から丁寧に切除
- 従来よりも出血・術後痛が軽減(高周波・コブレーター・超音波装置などで処置)
- 通常1週間前後で回復
入院日数や回復期間は、年齢、全身状態、施設方針、術後の食事や痛みの程度によって異なります。一般向けには、アデノイド切除は比較的回復が早く、PITAは従来の扁桃全摘より回復しやすい傾向があると理解するとよいでしょう。
合併症と注意点
どの手術にも合併症の可能性はあります。主な注意点は次の通りです。
- 術後出血(ごくまれ)
- 口内の違和感(舌のしびれ、嚥下時の痛みなど)
- 残った組織の再増殖・再肥大(切除不完全や成長に伴う再肥大で低年齢で手術した場合)
特に従来の扁桃摘出術では術後出血が重要な合併症として知られています。一方、PITAはそのリスクを減らすことが期待される反面、組織を一部残すため再増殖の可能性がゼロではありません。
他の選択肢はある?
症状の程度によっては、すぐに手術ではなく経過観察や保存的治療が選ばれることもあります。睡眠時無呼吸ではCPAP(睡眠時無呼吸用の空気マスク)が検討される場合もあり、手術が難しいケースや、術後も無呼吸が残るケースで選択肢になります。
一方、マウスピース(口腔内装置)は成人の睡眠時無呼吸で使われることが多く、小児では適応が限られます。小児のいびき・睡眠時無呼吸では、まずアデノイドや扁桃肥大の有無を耳鼻咽喉科で評価することが大切です。
副鼻腔炎や上気道炎などの感染や鼻炎によって無呼吸が起きている場合には抗生剤や点鼻薬の使用によって症状が和らぐ場合があります。
ただし、重症の睡眠時無呼吸や耳鼻疾患の再発が多い方には、根本治療として手術の方が効果的な場合も多いです。
手術を受けた方の声・期待できる変化

アデノイド・扁桃の手術後は、いびきの改善、睡眠の質の改善、日中の眠気や集中力の改善、家族の睡眠の改善などが期待されます。小児OSAでは、QOL評価スコアの有意な改善が報告されています。
特に小児では、睡眠の質が良くなることで、成長や日中の活動性の改善につながることがあります。保護者の満足度も高いと報告されています。
まとめ
アデノイド切除術とPITAは、どちらも呼吸や睡眠の質を改善するための手術ですが、対象となる部位や術式に違いがあります。小児のいびきや睡眠時無呼吸では、アデノイド・口蓋扁桃肥大が原因になっていることが多く、適切な症例では手術が有効です。
一方で、すべての人に同じ手術が向いているわけではありません。年齢、症状の強さ、検査結果、再発リスクなどを踏まえて、術式を選ぶことが大切です。いびきや無呼吸が気になるときは、まずは耳鼻科専門医に相談して、適切な方法を一緒に考えてみましょう。
