「ジフテリアって、昔の病気じゃないの?」と思う方も多いかもしれませんが、今も世界の一部では流行があり、日本でも油断できない感染症です。特にワクチン未接種者や抗体が低下した高齢者では重症化のリスクがあります。
- 喉の痛みと高熱が初期症状
- ワクチン未接種では重症化リスクあり
- 感染経路は飛沫・接触など多様
早期の診断と適切な対応が重症化を防ぐカギです。ワクチン接種の有無が生死を分けることもあります。
ジフテリアの主な症状

ジフテリアは2~5日の潜伏期を経て、発熱、のどの痛み、嚥下困難などが見られます。喉や扁桃に白~灰白色の偽膜ができ、これが剥がれにくく、出血することもあります。
重症化すると「bull neck(牛頚)」と呼ばれる頸部リンパ節の腫脹が起きたり、呼吸困難、心筋炎や末梢神経障害などの合併症が見られることがあります。
ジフテリアの原因・なり易い方

ジフテリアはジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)によって引き起こされます。感染経路は飛沫感染および接触感染で、特にワクチン未接種や長期間接種していない方、免疫力が低下している高齢者や小児が感染しやすいとされます。
感染は冬季に多く、気温が低く乾燥した環境で広がりやすいことが知られています。
ジフテリアの検査/診断方法
ジフテリアの診断には、まず喉頭ファイバーなどによる視診を行い、咽頭や扁桃の偽膜の有無を確認します。検体は咽頭、扁桃、あるいは鼻腔などから採取され、細菌学的検査(培養検査)によりCorynebacterium diphtheriaeの検出を行います。加えて、ジフテリア毒素遺伝子の有無を確認するためにPCR検査も実施されます。毒素産生型か非産生型かの判定も重要です。
また、合併症の評価には血液検査が有用で、心筋炎や腎障害の兆候が現れることがあるため、心電図や腎機能の評価も含めて全身状態を確認します。診断が疑われる段階でも、重症化リスクを考慮し治療を先行することがあります。
治療の方法・回復期間の目安

治療の基本は抗毒素(ウマ由来血清)と抗菌薬(ペニシリン、エリスロマイシン)の投与です。早期に投与すれば予後は良好ですが、発症3日目以降では致死率が上がることが報告されています。重症例ではICU管理や気管切開が必要な場合もあります。
回復には軽症例で1〜2週間、重症例では1か月以上を要する場合もあります。
類似症状の疾患
ジフテリアの症状は、喉頭、鼻咽頭、気管、気管支の炎症によるもので、以下のような疾患と鑑別が必要です。
- 急性扁桃炎(高熱と咽頭痛)
- 溶連菌感染症(白苔と発疹を伴う)
- 感染性単核球症(扁桃腫大とリンパ節腫脹)
- 猩紅熱(発疹と舌の苺状変化)
- Vincent咽頭炎(偽膜と潰瘍を伴う)
いずれも類似の咽頭所見があるため、細菌学的検査や血液所見での鑑別が重要となります。
ジフテリアにならないための予防・日頃のケア

最も重要な予防策はワクチン接種です。DPT(三種混合)ワクチンは小児期に3回接種、追加接種を経て、11〜12歳での2期接種が行われますが、成人では追加接種が行われていないケースも多いため注意が必要です。
渡航者は特に接種歴の確認を行うべきです。基本的な手洗いやマスク着用、衛生管理も有効です。
さいごに
ジフテリアは今でも命に関わる病気で、耳鼻科での早期対応が回復の鍵を握ります。ワクチンで予防できる感染症だからこそ、油断せず、しっかりと予防と早期診療を心がけましょう。ご不安がある方はお気軽に耳鼻科にご相談ください。