副鼻腔乳頭腫(ふくびくうにゅうとうしゅ)は、副鼻腔に発生する良性腫瘍で、まれな腫瘍の一つです。良性腫瘍ですが、再発することや、まれに癌を合併することがあり、早期の診断と適切な治療が必要とされます。

原因について

乳頭腫の原因ははっきりわかっていませんが、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関与している可能性があります。

また、副鼻腔の慢性炎症によって、腫瘍の発生を促す可能性も報告されています。

症状について

副鼻腔乳頭腫の一般的な症状は以下の通りです。

  • 鼻づまりや鼻閉感:腫瘍が鼻の通り道を占拠することで生じます。
  • 鼻出血:腫瘍から出血すると生じます。
  • 嗅覚の低下:においの通り道を腫瘍が占拠すると生じます。

鼻の通り道を塞ぐことで、副鼻腔炎が生じ、頭痛や頭重感、鼻漏などの症状もみとめます。

検査と所見

副鼻腔乳頭腫の診断には、以下の検査が一般的に行われます。

  • 鼻内視鏡検査:副鼻腔の内部を観察し、腫瘍の有無を確認します。
  • 組織生検:病変組織を採取し、病理学的な評価を行います。副鼻腔乳頭腫の所見は、病理学的に複数のタイプがあり、細胞の特徴や腫瘍の性質が評価され、確定診断が行われます。
  • 血液検査:SCCとよばれる腫瘍マーカーが上昇することがあります。

鑑別疾患

副鼻腔乳頭腫の症状は、他の鼻腔や副鼻腔の疾患と類似していることがあります。
とくに、鼻腔ポリープ、慢性副鼻腔炎、他の腫瘍性疾患(鼻腔癌など)などと鑑別する必要があります。
この場合、組織を実際にとる生検が重要となります。組織の一部をとっていますが、一回の生検で診断が確定しないこともあります。

治療法

副鼻腔乳頭腫の治療としては一般的には、手術加療が行われます。
手術では、腫瘍を完全に取り除くことを目標としており、内視鏡下に手術が行われることが多いです。腫瘍のサイズが大きい場合や周囲の組織に広がっている場合は、内視鏡だけでなく、歯茎や顔の皮膚を一部切開して腫瘍を取り除く手術も行われます。

治療における注意点

腫瘍の再発や悪性腫瘍の可能性

副鼻腔乳頭腫の治療における注意点としては、基本的に良性腫瘍ですが、再発することやまれに癌を合併することがあることです。そのため、手術を行なっても再発することがあり、早期の診断や適切な治療、術後の経過観察が重要となります。

診断確定の困難性

生検による組織検査は、腫瘍のごく一部を観察するものであり、手術後の組織検査の結果と異なる場合があります。癌を合併することもある腫瘍のため、手術は診断を確定するためにも必要となります。
癌を合併した場合、追加の手術や放射線治療などを検討します。
副鼻腔乳頭腫に関する詳細な情報と適切な治療法については、専門医に相談してください。

POINT
  • 副鼻腔乳頭種は副鼻腔に発生する良性腫瘍の一つで、HPVが関与している
  • 鼻の通り道を塞ぐことで鼻閉や嗅覚の低下、片側の鼻出血などの症状をひきおこす
  • 再発や癌の合併をすることがあり、適切な治療と慎重な術後経過が必要となる
野田 昌生

この記事の監修

野田 昌生

  • 自治医科大学 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科 講師
  • 耳鼻科専門医 医学博士