耳の中の皮膚は非常に敏感で繊細

耳の中はとても繊細で、皮膚も薄くデリケートです。かゆみを感じるとつい綿棒でこすってしまいたくなりますが、これはかえって皮膚を傷つけてしまう原因になります。

また、耳垢は単なる「汚れ」ではなく、外耳道を守るバリアのような役割があります。綿棒でゴシゴシこすってしまうと、この大切な防御機能が低下し、外部からの細菌やホコリに弱くなってしまうこともあります。

一時的に気持ちよくても、実は逆効果

一時的に気持ちよくても、実は逆効果

「耳がかゆい → 綿棒でかく → すっきりする」という感覚はよくありますが、これは一時的な刺激によって“快感”を感じているだけ。
実際には、乾燥・炎症・かゆみの悪化といった悪循環に入ってしまっていることが多いです。

特に耳の中が非常にかゆくなるアレルギーや耳だれが慢性化した時は、綿棒で耳をかくとかゆみが軽減され気持ちが良くなるのも分かりますが、綿棒で耳の中を刺激することで「外耳道炎」という病気の引き金になることもあります。
特に、毎日のように綿棒を使っている方は注意が必要です。自己判断での耳掃除が、かえって耳の健康を損なっているケースも多く報告されています。

耳鼻科でよくあるトラブル:実は「綿棒の使いすぎ」

耳鼻科の診療現場では、「耳がかゆい」「耳が痛い」「耳だれが出る」といった症状で来院する方の中に、原因が“綿棒の使いすぎ”という人が少なくありません。
特に外耳道炎は、綿棒で耳の中の皮膚を傷つけたことから細菌感染を起こし、赤く腫れたり膿が出たりする状態です。

治療には抗生剤の点耳薬や内服などが必要になることもあり、放っておくと耳の道が狭くなって難聴になる場合や、さらには癌になるリスクも。

耳掃除、実はあまり必要ありません

耳掃除、実はあまり必要ありません

健康な耳の中では、耳垢は自然に外へ排出されるようにできており、掃除をしなくても問題ありません。日本耳鼻咽喉科学会も、「耳掃除は月に1〜2回、入り口から1cm以内を軽く拭く程度で十分」と推奨しています。
一方で以下のような場合は、自分で判断せず、耳鼻科での診察をおすすめします。

  • 耳のかゆみが長く続く
  • 耳だれや痛みを伴う
  • アレルギー体質や皮膚疾患がある
  • 耳垢が湿っぽくたまりやすい
  • 耳の道がせまく、つまりやすい

かゆみの原因が乾燥・アレルギー・真菌(カビ)・湿疹などであることもあり、市販の綿棒では解決できない根本的な問題がある可能性もあります。
こうしたケースは自己判断ではなく、耳鼻科で診てもらうことが安全です。市販の綿棒では対処しきれない問題が隠れているかもしれません。

耳のかゆみが続くときは早めに受診しましょう

耳のかゆみを感じたときこそ、自己処理に頼らず、専門医に相談することが大切です。あなたの耳を守るのは、刺激ではなく「やさしさ」と「正しいケア」です。
綿棒はほどほどに、耳を守る習慣を身につけましょう。

野田 昌生

この記事の監修

野田 昌生(のだ まさお)

  • 自治医科大学 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科 講師
  • 耳鼻科専門医 医学博士