繰り返す鼻づまりや嗅覚障害に悩まされていませんか?
好酸球性副鼻腔炎は、再発を繰り返しやすい慢性副鼻腔炎の一種で、喘息などのアレルギー体質との関係が注目されています。
厚生労働省の指定難病にもなっており、正しい理解と継続的な治療が大切です。
- 軽症のうちから治療することが大事
- 鼻うがいで再発予防を目指す
- 死亡率は低いが放置はNG
鼻づまりや嗅覚障害を軽視すると生活の質が大きく下がることもあります。正しい知識をもとに早期対応を心がけましょう。
好酸球性副鼻腔炎の主な症状

- 鼻づまりが長期間続く(2週間以上)
- においが分かりにくくなる(嗅覚障害)
- 粘り気のある鼻水が出る
- 後鼻漏(のどに鼻水が落ちる感覚)
- 鼻ポリープによる鼻の違和感や異物感
症状は一見すると一般的な慢性副鼻腔炎と似ていますが、好酸球性副鼻腔炎は特に嗅覚障害や粘稠な鼻汁、再発性の鼻茸が特徴です。
また、喘息を併発しているケースも多くみられます。さらに、鼻茸は篩骨洞(しこつどう)を中心に両側性に認められることが多く、これが診断の重要な手がかりとなります。
好酸球性副鼻腔炎の原因・病気になり易い方

好酸球性副鼻腔炎(ECRS)は、自然免疫と獲得免疫の異常による2型炎症が中心の病態です。鼻粘膜のバリア機能が破綻すると、IL-4・IL-5・IL-13といったサイトカインが過剰に働き、好酸球の浸潤、フィブリン沈着、鼻茸の形成が進行します。喘息、アスピリン過敏症、アレルギー性鼻炎を有する方が発症しやすく、40代以上の男性に多い傾向があります。
病態の中心である2型炎症を悪化させる原因には、いくつかの要素があります。まず、ハウスダスト(ほこり)やダニ、カビ、花粉、ペットの毛やふけなどの「アレルゲン(アレルギーのもと)」があります。これらは身の回りの環境に多く含まれており、知らないうちに体内に入り、アレルギー反応を引き起こしてしまうことがあります。
また、黄砂やPM2.5などの空気中の微粒子、タバコの煙や排気ガス、強い香料や洗剤なども、鼻や気管支などの粘膜を刺激し、炎症を悪化させる原因となります。さらに、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染、細菌感染も、体の免疫バランスをくずして炎症を強めてしまいます。
生活習慣も大きく関係しています。ストレス、睡眠不足、過労などが続くと、体の防御機能が弱まり、症状が出やすくなったり、悪化したりすることがあります。体質改善を意識した食生活にもこころがけましょう。
好酸球性副鼻腔炎の検査/診断の方法
好酸球性副鼻腔炎の診断には、以下の検査が行われます。
- 問診・視診:鼻づまりや嗅覚障害の有無、喘息や薬剤アレルギー歴などを確認
- 内視鏡検査:多発性鼻茸や粘稠な鼻汁の確認
- CT検査:篩骨洞を中心とした両側性の陰影や嗅裂閉塞を確認
- 血液検査:末梢血中好酸球の増加
- 組織病理検査:鼻茸内に好酸球が70個以上/高倍率視野で認められるかを評価
診断にはJESRECスコアが活用され、11点以上で好酸球性副鼻腔炎と診断されます。加えて、重症度の分類も行われ、術後の再発予測や治療方針の決定に役立ちます
好酸球性副鼻腔炎の治療の方法・回復期間の目安

治療は保存療法と手術療法を組み合わせて行います。
- 鼻うがい:鼻腔内の炎症物質・アレルゲン除去に有効
- ステロイド薬:内服や点鼻で炎症を抑制(例:プレドニゾロン0.3~1.0mg/kg/日)
- 内視鏡手術(ESS):ポリープや病変部位の除去。単洞化により薬剤到達性を高める
- 生物学的製剤(Dupilumab、Mepolizumab、Omalizumab等):術後再発例に使用
経過中に喘息が発症するケースもあります。再発率は高く、再発防止のための継続的治療とフォローアップが欠かせません。手術後も1年以上、理想的には継続的な観察が推奨されます。
好酸球性副鼻腔炎の類似症状
- 一般的な慢性副鼻腔炎(非好酸球性)
- アレルギー性鼻炎
- アレルギー性真菌性副鼻腔炎(AFRS)
- 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)
- IgG4関連副鼻腔炎
いずれも鼻茸や嗅覚障害を伴うため、鑑別診断には専門医の判断が必要です。特にAFRSやEGPAなどは、診断後の治療方針が異なるため注意が必要です。
好酸球性副鼻腔炎にならないための予防・日頃のケア

- 抗炎症作用のある食材(青魚、緑黄色野菜、発酵食品)の積極的摂取
- 鼻洗浄の習慣化(生理食塩水などで1日3回以上)
- ハウスダスト、花粉、ダニなどアレルゲン対策、環境整備
- 禁煙、規則正しい生活、適度な運動による免疫力維持
- 定期的な耳鼻科受診による早期対応
- 感冒などによる急性増悪への対応
病態の中心である2型炎症を悪化させる原因をできるだけ避けることが、症状のコントロールにつながります。たとえば、部屋を清潔に保つ、空気清浄機を使う、外出時にはマスクを着ける、たばこの煙を避ける、こまめに換気するなどの工夫が効果的です。
手洗いやうがいをしっかり行い、感染症を防ぐことも大切です。また、鼻に入ってしまったアレルゲンやサイトカインを鼻うがいで取り除くことが重要です。
納豆やカプサイシンが含まれる食事は、フィブリンを分解する作用や抗炎症作用があるため、研究段階ではありますが、効果がある可能性があります。
さいごに
好酸球性副鼻腔炎は難治性で再発しやすい疾患ですが、現在は診断と治療の体制が整ってきています。JESRECスコアを中心とした評価と、生物学的製剤をはじめとする治療の選択肢の広がりによって、より的確なアプローチが可能です。
適切な治療と日常のケアによってコントロールが可能な病気ですので、症状に悩まれている方は、ぜひ専門医の診察を受けてください。