急性扁桃炎は、扁桃の炎症によって引き起こされる喉の病気で、症状としては炎症によって扁桃が腫れたり、発熱やのどの痛み、食欲不振、頭痛、体のだるさなどの症状が現れます。また、扁桃が腫れると、のどの奥が狭くなり、息苦しさを感じることもあります。欧米の報告では主にウイルスによることが多く、細菌感染によっても引き起こされます。
ウイルス感染では、主にアデノウイルスやエンテロウイルスが関与します。細菌感染では、主にA群β溶連菌が関与することが多いとされています。
扁桃炎は軽症であれば、安静や休養などによって自然に回復することもありますが、こどもでは、発熱や食事摂取不良よる影響を受けやすいことに注意する必要があります。ウイルス感染の場合は、症状を緩和するための対症療法が主体となります。一方、細菌感染の場合は、抗菌薬を用いて治療を行います。
必要な検査とその所見について
急性扁桃炎は診察で診断することが多く、主な症状や所見から判断します。扁桃が赤く腫れていたり、膿がついていたりすることが特徴です。また、細菌感染が疑われる場合は、扁桃から細菌の培養検査が行われることがあります。感染や炎症の程度を把握するために、血液検査をすることもあります。
急性扁桃炎では、さらに重症な疾患として扁桃周囲膿瘍や急性喉頭蓋炎、咽後膿瘍を考慮する必要があります。厚生労働省の「微生物薬適正使用の手引き」では、より重症の可能性がある基準としてRed flagを設けています。
これは例えば、”人生最悪の痛み”や”唾も飲み込めない状態”であったり、開口障害や嗄声、呼吸困難がある例ではこれらの疾患を考慮する指標となります。また、日本の重症度分類としては、日本口腔咽頭学会が重症度スコアとそれに基づいた重症度分類を提唱しています。これは、
- 不機嫌や活動性
- 食事摂取量
- 発熱の程度
- 咽頭・扁桃の所見(発赤や膿栓)
から、重症度を判断し、治療の方針を決めていくというものです。
治療方法について
急性扁桃炎では、重症度に応じて治療方針が決定されます。軽症であればまずは、みや発熱などの症状を和らげるために、炎症を抑える薬によって加療が行われますが、改善がない場合や中等症では抗菌薬が使用されます。抗菌薬の種類については意見が分かれるところではありますが、主にβラクタム系の抗菌薬である、ペニシリン系やセフェム系の抗菌薬が使用されます。
改善がない場合や重症例ではその他の抗菌薬の選択されます。食事摂取が難しい場合や消耗が激しい例では、入院の上で点滴による加療が行われる場合があります。
治療を考える際の注意点
急性扁桃炎では、さらに重症な疾患の合併や抗菌薬の乱用による耐性菌について考慮する必要があります。
重症な疾患の合併
急性扁桃炎から、感染がひどくなることにより、扁桃周囲膿瘍や急性喉頭蓋炎、咽後膿がおこることがあります。この場合、抗菌薬の使用のみでは改善しないことも多く、切開による排膿が必要となります。こどもでは、全身麻酔による手術加療が必要になります。
また、息の通り道が狭くなってしまうため、呼吸状態が不安定になる可能性があります。この場合、気管挿管や気管切開による気道確保を行った上で、呼吸管理が必要になります。
抗菌薬の乱用による耐性菌
細菌感染に対して抗菌薬を適正に使うことは問題ないのですが、過度に服用したり、途中で休薬したあとに、感染が再度増悪する例などでは、薬剤に対する耐性菌が生じる可能性があります。
これにより、従来効果のあった薬剤が効かない細菌によって、感染が引き起こされるため、治療の選択肢が少なくなってしまいます。
できる範囲で、早期に治療を行うことや、原因となる細菌に対して効果のある治療を、必要な期間行い、しっかりと治すことが必要とされます。
- 急性扁桃炎はウイルスや細菌によって、扁桃腺に炎症が起きる疾患
- 発熱や食事量、扁桃の所見などから、治療方針を決めている
- 重症例では膿をつくってしまったり、のどのさらに奥が腫れてしまうことがあり、抗菌薬の治療に加えて、気道の確保や外科手術が必要となる場合がある