後鼻孔閉鎖とは、鼻の通り道の後方(後鼻孔)が閉塞される状態を指します。
この状態になると、鼻腔からの分泌物や粘液が排出されずにたまり、炎症を引き起こすことがあります。また、息の通り道を塞ぐことで、鼻づまりや呼吸困難などを引き起こすことがあります。
後鼻孔閉鎖症では、後鼻孔が骨性または膜性に閉鎖している状態であり,両側性と一側性の場合があります。ほとんどが先天性であり、後天性の後鼻孔閉鎖症は極めて稀です。

原因について

先天性のものでは、胎児のころの発育過程(胎生6週ごろ)において、口腔と鼻腔を隔てる薄い組織に穴が開かない場合に起こると考えられています。
奇形頭蓋や顔面などになんらかの奇形を合併することも多いです。また、全身に他の疾患を合併することもあります。(CHARGE症候群)
後天性では、外傷や手術操作、放射線治療、梅毒や結核などの感染症に関連して生じる例があります。

病態について

閉塞が両側性か片側性かでその症状は大きく異なり、両側性の場合は、鼻呼吸ができないため出生直後より呼吸困難と哺乳困難をきたします。
片側性の場合の主症状は、鼻腔からの分泌物や粘液が排出されずにたまる鼻汁が多く、呼吸困難や哺乳困難を起こすことは少ないため、成長するまで気付かれないことも多いです。

必要な検査とその所見について

哺乳時の呼吸困難や、細い吸引カテーテルが鼻腔から咽頭へ通過しない場合は、後鼻孔閉鎖を疑います。後鼻孔閉鎖の診断には、鼻に空気や細い吸引カテーテルが通るかどうかをみたり、鼻内視鏡検査やCT検査などの画像検査が使用されます。鼻内視鏡検査では、鼻の奥にカメラを挿入して、鼻腔と喉頭部の様子を確認します。

鑑別疾患について

鼻腔腫瘍、鼻腔狭窄など、新生児呼吸困難や鼻閉の他の原因と鑑別する必要があります。

治療方法について

主な治療法は、閉塞を取り除く手術で、内視鏡的または経口的アプローチで行われることがあります。初期治療では、赤ちゃんの気道を確保するために、口腔エアウェイや気管内チューブを挿入することがあります。

治療を考える際の注意点

手術を行うタイミングは、赤ちゃんの健康状態や手術に耐えられるかどうか、症状の重さなど、いくつかの要因によって決まります。
手術が可能になるまでは、赤ちゃんの呼吸状態を注意深く観察することが大切です。手術後は、再閉鎖が生じないか、口腔から鼻腔への逆流がないか、滲出性中耳炎が生じないかなどの潜在的な合併症を管理するために、経過観察が必要です。

POINT
  • 後鼻孔閉鎖は鼻の通り道の後方(後鼻孔)が閉塞される状態
  • 先天性のものが多く、呼吸や哺乳がうまくいかない症状をきたす
  • 程度にもより手術が必要となり、呼吸状態を注意深く観察することが大切
上野 貴雄

この記事の監修

上野 貴雄

  • 金沢大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教
  • 耳鼻科専門医 医学博士